〔毎日新聞社読者モニター〕
 
  
【読者モニター(1)】
 
 モニターの皆様へ
  
 謹啓 皆様、いかがお過ごしでしょうか。日ごろ、毎日新聞社にご支援ご協力を賜り、誠にありがとうございます。
 さて、次回(2005年4月末掲載予定)の読者モニターのテーマは、「愛・地球博(愛知万博)報道」とさせていただきました。愛・地球博は3月25日から半年間、「自然の叡智」をテーマに愛知県を舞台に開催されます。日本での万博開催は大阪万博以来、35年ぶりのことです。万博報道は昨年来、単発記事やコラム、特集面などで時々報じられてきましたが、開幕の前後にはさらに多彩な報道が繰り広げられると思われます。そこで、これらの紙面に目を通していただき、率直なご意見、ご感想をいただければ幸いです。
 寒さ厳しい折、お身体をご自愛ください。
 
  ■字  数■ 同封のモニター用紙1枚以内にまとめてください。
  ■ご回答日■ 2005年4月13日(水)までに担当者宛て必着でお送りください。
 お忙しいところ誠に恐縮ですが、ご協力のほど宜しくお願い申し上げます。
2005年3月吉日 
毎日新聞社 
 
■質問事項■
 1面、社会面、連載企画、「コラム」等で報道される「愛・地球博(愛知万博)報道」に関係する記事を読んで、ご感想、ご意見をお書きください。ご感想、ご意見は掲載された記事(日付)を示した上で、できるだけ、具体的にお書きください。
 
 愛・地球博の具体的な内容、全体像が見えてこない。どの紙面にも「1970年の大阪万博以来」「参加国120ヶ国」「自然の叡智」「最先端技術」などの言葉が用いられているが、いずれも踏み込みがなく、ステレオタイプに陥っている。
 
 3月22日朝刊2面「発信箱」は、大阪万博との対比を際立たせて、愛・地球博の位置づけや意味を浮き彫りにしようとしているものの、3月25日朝刊1面「余録」、同5面「社説」は両者を並列するに止まっている。国際博覧会としての性格についても、3月25日朝刊「企画特集愛・地球博開幕」の14面で開催国の歴史をまとめているものの、今回の愛・地球博への参加国の具体的国名が明示されているのは、3月27日朝刊2面の「主なナショナルデーのスケジュール」の中だけである。しかも、25日朝刊13面が「120ヶ国4機関」であるのに対して、27日朝刊2面は「121ヶ国4機関 」であり、参加国数に齟齬がある。記事の信憑性に疑念が生じる。
 
 具体的な内容の記述が乏しい中、3月23日朝刊15面、および翌24日朝刊15〜17面の企画特集「こいの池イヴニング」の紹介記事は、逆に詳細すぎてアンバランスである。このアンバランスは「毎日新聞社協賛」に由来するものと推測されるが、パノラマレストランの料理メニューと値段まで掲載するのは、明らかに紙面のムダ使いである。商業メディアによる報道の公正性について改めて考え直す機会になった。
 
 読み応えのある記事は、3月15日〜17日朝刊3面の〈21世紀博の肖像〉であった。地元財界の構造を紹介して「トヨタ万博」という性格を顕在化させている点、「環境博」によって生じる「環境負荷」という視点から万博自体の問題性を指摘している点、コンセプトの曖昧さを広告代理店の主導に見出そうと穿った見方をしている点、これらには教えられることが多かった。3月29日朝刊4面「新聞時評」はこの企画を「踏み込みが一歩弱い」と評しているが、私には、愛・地球博の本質に迫ろうとする中部報道センターの担当記者たちの真摯な熱意が感じられ、唯一好印象であった。
 
 
 
【読者モニター(2)】
 
 モニターの皆様へ
 
 謹啓 皆様、いかがお過ごしでしょうか。日ごろ、毎日新聞社にご支援ご協力を賜り、誠にありがとうございます。
 さて、次回(2005年7月末掲載予定)の読者モニターのテーマは、4月から始まった企画「闘論」(毎週月曜日朝刊2面または3面に掲載)とさせていただきました。毎日新聞は「論争のある新聞」をキャッチフレーズに掲げています。「闘論」はその時々のホットなテーマについて、相反する意見を持つ専門家の主張を闘わせ、読者の認識を深める一助にしてもらうのが狙いです。そこで、「闘論」を読んでいただき、率直なご意見、ご感想をいただければ幸いです。
 梅雨入りも迫って来ました。お身体をご自愛ください。
敬具 
 ■字  数■ 同封のモニター用紙1枚以内にまとめてください。
 ■ご回答日■ 2005年7月13日(水)までに担当者宛て必着でお送りください。
 お忙しいところ誠に恐縮ですが、ご協力のほど宜しくお願い申し上げます。
毎日新聞社 
 
■質問事項■
 毎週月曜日の朝刊2面または3面に掲載されている企画「闘論」を読んでのご感想、ご意見をお書きください。ご感想、ご意見は掲載された記事(日付)を示した上で、できるだけ、具体的にお書きください。
 
 「その時々のホットなテーマについて、相反する意見を持つ専門家の主張を闘わせる」という企画の狙いは面白い。通常紙面では、出来事を記述した一般の記事や、新聞社あるいは記者個人の見解を一方的に論述した社説やコラムなどに接する機会が多いからである。その上、例えば6月27日「闘論 成果主義は適切か」に先立って、6月7日朝刊以降「「成果主義」って何ですか」(第1部@〜G)を連載し、また、6月30日朝刊以降「サラリーマン増税!?所得税改革の狙い」(@〜D)を連載しつつ、7月4日「闘論 個人所得課税の見直し」を掲載するなどの紙面戦略も、インパクトのある題字とともに、この企画を読者に強く印象づけている。相反する意見を対立させることによって問題の本質にいっそう深く切り込もうとする姿勢は、「論争のある新聞」を標榜する毎日新聞の真骨頂と言えよう。
 
 しかし、真に読み応えのある「闘論」は難しい。「相反する意見」の対立軸および対立の質が問われなければならない。比較的成功しているのは、4月11日「BSEと輸入再開圧力」、4月25日「安保理拡大の行方」、5月2日「ITERの日本誘致」、5月9日「郵政法案どうする」、6月20日「臓器移植法二つの改正案」などであろう。対立軸が鮮明で、促進派と慎重派の対立が浮き彫りにされている。
 
 これに対して、対立軸にズレのあるもの、そもそも対立軸が存在しないものもある。5月16日「「総合学習」必要か」は、総合学習の問題点に着目する見直し論と成功例に着目する継続論のすれ違いであり、同様に6月27日「成果主義は適切か」も、成功する成果主義と失敗する成果主義のすれ違いに終始している。また、4月4日「性教育どこまで」は、性教育へのさまざまなレベルでの取り組みとして両論を包括できるであろう。いずれの内容も、論者が相互に同じ土俵でがっぷり四つに組む「闘論」のイメージからはほど遠い。さらに、6月6日「首相の靖国参拝」は、靖国参拝ではなく、A級戦犯分祀をテーマとすべきであり、7月4日「個人所得課税の見直し」は、相反する対立の議論にまで熟していない。5月23日「住基台帳閲覧の是非」は、個人情報保護の点から見れば対立以前の問題である。
 
 必ずしも成功していないこれらの例では、問題そのものにそのような事態を引き起こす原因があることも推測される。しかし、論者たちは相手を前にして議論しているわけではなさそうである。文末の構成記者名がそのことを示している。別々の記者による取材が編集され「闘論」が作り上げられているのではなかろうか。対立軸のズレや議論のすれ違いは、むしろこのような手法に起因するのかもしれない。「TVタックル」や「朝まで生テレビ」のような紙面版「闘論」を期待したい。
 
 
 
【2005年(平成17年)8月2日(火曜日)「毎日新聞」第18面】 発行所:毎日新聞西部本部 copyright 毎日新聞社2005
 
 
読者モニター 開かれた新聞
 
 毎日新聞は「論争のある新聞」を目指し、ホットなテーマについて当事者らが主張を述べ合う「闘論」のコーナーを設けています。「毎日新聞読者モニター200人」では今回、「闘論」がどう読まれているかを聞き、188人から回答を得ました。多くの方から「直面する問題をズバリ考えさせてくれる」などの評価をいただく一方、テーマによっては「議論がすれ違いになっている」などの指摘もありました。
 
 …… 山口県の大学教授、西田雅弘さん(50)=企画の狙いは面白い。だが、対立軸にずれがある、または対立軸が存在しないため、成功していない例もある。……
 
 堂々と述べ合う文化を広めたい
 
 「闘論」は、いま論議の的となっているテーマをめぐり「対立する当事者が真っ向から主張を述べ合う」ことを目指している。このため、テーマに関しては編集局の各取材部門のデスクが案を出し合い、選び抜いた争点について担当部署が論者の人選とインタビューを行うという手順を踏んでいる。
 
 最も困難なのは人選だ。例えば小泉純一郎首相の靖国神社参拝について「当事者」が「闘論」するというなら、首相本人と中国首脳などの直接対決が理想だろう。しかし現実的にはほぼ不可能なので、自民党議員2人を当事者と見なして是非論を聞いたところ、対立が鮮明でないといった悩ましいケースもあった。
 
 また、取材を申し込んでも「目立ちたくない」「論争形式は刺激的」などと断られる例がある。突出や摩擦を嫌う伝統的心情は理解できるが、それでは議論が深まらない。堂々と見解を表明する文化を、もっと広めたい。【編集員・中島哲夫】
 
 
 けだるい夏の朝食。まだ朦朧とした眼差しが紙面を泳ぐ。ん?読者モニターのページか。さて、今回は……。おおっ、掲載されているぜ!前回ボツだったので、期待はしていなかった。「ちょっとこれ見て。何か出てるよ」。食事をする家族たちにさりげなく紙面を示す。言うまでもなく、俄然、話題の中心に。このところ家庭内での存在感が薄れてきたお父さんの面目躍如。どおだあ。
 
 モニター委嘱を受けて以来、「読者モニター」に掲載される意見の傾向に注目している。記者や編集者の姿勢よりも、個々の記事内容への言及が求められているのかなあ。新聞社に賛同してヨイショするのがいいのかなあ。しかし、身内だけでなく、部外者の意見にも耳を傾けましょう、というのが「開かれた新聞」の趣旨のはず。身内に甘いのは世の常。せめて外部から批判を、ということですよね。批判的意見は排除されるのかと思いきや、そうでもなさそう。毎日新聞社は、まだ健全です。
 
 今回、188人中掲載58人。およそ3割。また、当方2回目で1回掲載。これは5割。モニター委嘱という前提はあるものの、掲載率は「仲畑流万能川柳」よりもはるかに高率ですね、きっと。(笑)
 
【読者モニター(3)】
 
 モニターの皆様へ
 
 謹啓 盛夏の候、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。日頃、毎日新聞社にご支援、ご協力を賜り、誠にありがとうございます。厚く御礼申し上げます。
 さて、次回(2005年10月末掲載予定)の読者モニターのテーマについては、3月から続いているシリーズ企画「戦後60年の原点」に決まりましたので、ご連絡させていただきます。
 
 「戦後60年の原点」は別紙(新聞コピー)にありますように、1945年、敗戦の年に起きた節目の出来事をゆかりの日に合わせて毎月特集しているもので、単なる回顧ではなく「あの日を今に問う」をキーワードに、戦後史の原点ともいうべき出来事を再検証しながら「今」への教訓を読み取ろうという企画です。今後、8月5日ごろに特集「原爆投下」、同15日ごろに特集「終戦」、9月1日ごろに特集「日本占領」を予定しているほか、随時、各種関連記事を単発や連載で掲載する見通しです。8月5日ごろ予定の「原爆投下」について急ではございますが、これもぜひお読みいただきたいと思いまして、今回早めのご連絡をさせていただく次第です。
 
 このシリーズ記事にはすべて「戦後60年の原点」という共通ワッペンを付けていますので、見つけやすいかと思います。また、各地の地方版によっては「戦後60年の原点」の記事を作っているところもありますので(地方版はワッペンを使っていない場合もあります)、ご参考にしていただけたらと思います。
 
 そのうえで、モニターの皆様には「戦後60年の原点」という企画全体あるいは個別の記事に対する率直なご感想やご意見を聞かせていただければ幸いです。回答の字数はこれまで同様、同封の用紙1枚程度にまとめていただけたらと思います。締め切りについてはまことに勝手ながら、10月11日(火)までに貴地の担当者宛て必着でお送りください。
 お忙しいところを恐縮ですが、宜しくお願い申し上げます。
敬白 
 
2005年8月吉日 
毎日新聞社 
 
★回答用紙★
 3月以来、随時「特集」を中心に朝夕刊に各種記事を掲載していますシリーズ企画「戦後60年の原点」を読んでのご感想、ご意見をお書きください。掲載記事(日付)を示していただいた上で、できるだけ、具体的にお願いします。
 
 「敗戦の年に起きた節目の出来事をゆかりの日に合わせて毎月特集」し、「戦後史の原点ともいうべき出来事を再検証」することによって「今」への教訓を読み取ろうとする企画。ポイントは「単なる回顧」ではなく、「「今」への教訓」にある。この意味で、「今」を生きる私たちのあり方が問われている。特別編を挟みながらの毎月の特集、とりわけ8月6日(土)朝刊20-21面の「被爆者100人証言集」、8月15日(月)朝刊ほぼ全紙面にわたる「終戦記念日特集」を見ただけでも、この企画に対する毎日新聞社のただならぬ力の入れようが伺える。「この60年を問い、読者の皆さんとともに、今を、そして将来を考えたい」(8月15日朝刊第1面)という宣言は重い。
 
 人間においてそうであるように、マスメディアにおいても、その質を決定するのは、最終的には自己自身へのまなざしのあり方である。毎日新聞社はこのことに気付いている。8月9日(火)朝刊第13面「元本紙論説委員の終戦前後の日記」、8月15日(月)朝刊第21面「終戦を伝えた1945年8月15日付毎日新聞」、9月20日(火)朝刊第17面「従軍記者の証言」などを初めとするマスメディアそのものの再検証は、このポイントを突くものである。「誰よりも先に責任を自ら問わなければならないのだ」(上掲8月9日第13面)という先輩論説委員の言葉は、まさに「今」を担っている編集者、若い世代の記者たちに向けられていることを毎日新聞社ははっきりと自覚している。大阪本社編集局次長の、「「一粒の重み」をかみしめ」(8月5日(金)朝刊第13面)、新聞記者として「原爆を書き続ける」(8月6日(土)朝刊第23面)という姿勢と決意は高く評価されよう。
 
 しかし、その姿勢と決意ははたして貫き通せるのか。「原爆を書き続ける」ことは実際にどこまで可能なのか。おそらく全社を挙げたこの「原点」企画ですら、参議院郵政法案否決、衆議院解散総選挙、小泉自民党圧勝の報道の中で一時的に影が薄くなってしまったではないか。マスメディアの特性とその限界を十分に自覚した上での姿勢と決意であるのか。自己自身の限界への謙虚な内省を踏まえてこそ、「今を、そして将来を考える」ことに内実が伴うのである。
 
 私としては、大々的な毎月の特集よりも、むしろ「広島・長崎1945年」「占領の秋1945年」の長期連載に心を引かれた。短い囲み記事ながら60年前の同月同日の出来事を、まさに同一の時間軸上でリアルタイムに追体験できる。歴史展開の速度を体感するには、毎日配達される新聞の特性を最大限に活かしたこのような連載にまさるものはない。NHKテレビの「その時歴史が動いた」ですら、この点で新聞を越えることはできないのだ。
 

 

【読者モニター(4)】
 
モニターの皆様へ

 謹啓 晩秋の候、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。日頃、毎日新聞社にご支援、ご協力を賜り誠にありがとうございます。厚く御礼申し上げます。
 
 さて、次回の「毎日新聞読者モニター200人」(2006年1月末掲載予定)のテーマが決まりましたので、ご連絡させていただきます。次回テーマは総合面(原則第3面)に連日掲載しています「クローズアップ」です。
 
 「クローズアップ」は、毎日新聞が総合面のメイン記事の一つとして月曜を除きほぼ毎日掲載しているものです。その日のホットニュースや世の中の注目を集めているテーマについて、深く掘り下げて真相や底流に切り込み、あるいは多角的・重層的に取材して、より分かりやすく説得力のある報道を目指すコーナーです。
 
 モニターの皆様にはこの「クローズアップ」をお読みいただき、率直なご感想やご意見を聞かせていただければと思います。集約の都合上、@「クローズアップ」というコーナー全体や手法についてA個別の記事内容について―と分けて書いていただければ幸いです。ご面倒であれば、1項目だけでも結構です。
 
 回答については、これまで同様、同封の用紙1枚程度にまとめていただけますか。締切は、まことに勝手ながら1月11日(水)までに貴地の支局必着とさせていただきたいと思います。なお、年始旅行などの事情で1月上旬の執筆が難しい場合には、年末に原稿をいただいても結構です。
 
 以上、どなた様も年末・年始に向けてお忙しいところを恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。

敬白 
 
2005年11月吉日 
毎日新聞社 
 
★回答用紙★
 総合面に掲載している「クローズアップ」へのご感想、ご意見を@「クローズアップ」というコーナー全体や手法についてA個別の記事内容について―お書きください。掲載記事(日付)を示していただいた上で、できるだけ具体的にお願いします。
 
 @「より分かりやすく、説得力のある報道」を目指して、限られた紙面の中でとりわけ有効に活用されているのが、図表やイラストであろう。視覚的、直観的に事態の本質を理解させることができるわけである。しかし、注意しなければならないのは、その直観性は、一字一字文字を読む論理的思考とは対照的に、単に感覚的で曖昧なイメージに止まってしまう危険性がある点である。
 
 11月26日(土)「06年度税制改正の主な争点」、12月2日(金)「患者の窓口負担額はこう変わる」、12月4日(日)「ポスト小泉争いの構図」、12月14日(水)「東アジアサミット」などは、図表化や視覚化によって複雑な事態を理解しやすくすることに成功している。その点、12月16日(金)「06年度与党税制大綱」では記事中に数字が羅列され、一度読んだだけではほとんど理解できなかった。
 
 12月15日(木)「耐震データ偽造の関係者図」は、11月24日(木)「建築工事の手続き」の一般論に今回の事件を当てはめた図式であるが、事態の複雑さをそのまま提示しただけでむしろ分かりにくい。12月21日(水)「『グランドステージ藤沢』の問題点」のひび割れた建物のイラストは、意味不明で掲載の必然性がまったく理解できない。曖昧で空虚なイメージだけが残る。
 
 学術的専門的な内容をイラストを利用して分かりやすく提示しているのは、12月8日(木)「はやぶさの飛行と岩石採取計画の流れ」、12月17日(土)「ES細胞作成の流れ」である。しかし、12月24日(土)「韓国ES細胞ねつ造」に、詳しい解説もないままサイエンス誌のES細胞の写真を転載しているのは理解に苦しむ。素人の読者には通常の細胞とES細胞の区別すらつかないはずである。「NT-hESC-2」「NT-hESC-3」などの字句があると何となく学術的科学的な雰囲気を出せるというつもりであろうか。掲載する素材の吟味が足りないのではないか。
 
 Aとりわけ関心を引いたのは、12月25日(日)「ジワリ悪化体感治安」に、識者の見解として「マスコミが事件をどのように報道するか」という視点を掲載しているところである。人間だけでなく、マスメディアにおいても、その質のあり方を決定するのは自己自身へのまなざしのあり方である。体感治安の報道をめぐって、マスメディア自体のあり方を問おうとする姿勢を高く評価したい。
 
 この点は、12月26日(月)朝刊第5面の社説「NHK番組改変」において、朝日新聞批判として展開されている。12月27日(火)朝刊第22面によれば、その朝日新聞は記者倫理行動基準の策定などの改革案をまとめている。他紙の批判はともかく、毎日新聞自身の誠実な自己吟味を切望する。
 

 

【読者モニター(5)】
 
  もう1年間読者モニターを継続することになりました。2月初旬に毎日新聞社から届いた封筒には、「1年間ご協力いただきまして、誠にありがとうございました」という感謝状と、「モニターを1年間お願いいたします」という委嘱状の2通がいっしょに同封されていました。
 
 当初、大学の教員としてささやかな社会貢献の1つにでもなれば、という思いでこの読者モニターをお引き受けはしたものの、それなりに結構手間もかかって大変だということが分かってきました。日々の紙面に注意を払ってメモを残すだけでなく、テーマによっては過去の紙面を探し出して記事を収集する場合もあるからです。
 
 「開かれた新聞」という理念の下で社外の声に耳を傾けるという姿勢はもちろん理解できますが、うがった見方をすれば、この「読者モニター制度」によって日本中の少なくとも200人は、日々、必ず毎日新聞にしっかり目を通しているわけで、作っている側からすれば、丁寧に読んでくれる読者がいるという安心感を確保できるというわけですかね。

 てなわけで、やや息切れしながら、もう1年……。

 
モニターの皆様へ
 
 謹啓 晩冬の候、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。日頃、毎日新聞社にご支援、ご協力を賜り誠にありがとうございます。厚く御礼申し上げます。
 
 さて、新任期の第1回目となる「毎日新聞読者モニター200人」(4月末掲載予定)のテーマが決まりましたので、ご連絡させていただきます。
 
  第1回テーマは「国会報道について」です。

 いま、「小泉政権」の総決算となる通常国会が開会中です。今国会では「行政改革推進法案」「教育基本法改正案」「防衛省設置法案」など重要法案が目白押しの一方、「耐震データ偽造事件」「ライブドア事件」「米産牛肉輸入問題」などホットな事象が大きく問われています。さらに、「少子化」「団塊」「財政」「憲法」など中長期的な課題への対応を迫られ、9月の自民党総裁選に向けては「ポスト小泉」をめぐる政争も活発化してきます。
 
 国会報道はしばしば政策・制度・法律・規則などの形で、複雑な仕組みや細かな文言が焦点となるため、「読みづらく、面白くない」記事となりがちでもあります。このため、テレビであれば「視聴率が下がる」などの理由で詳報を避けがちですが、新聞はそうはいきません。国会報道への熱意と工夫が問われるところです。
 
  毎日新聞の「国会報道」の仕方について率直なご意見をお聞かせください。
 
 回答については、同封の用紙1枚程度にまとめていただけますか。締切りは、まことに勝手ながら4月11日(火)までに貴地の支局必着とさせていただきたいと思います。
 
 以上、お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。

敬白 
2006年2月 
毎日新聞社 
 
★回答用紙★
 毎日新聞の「国会報道」の仕方について率直なご感想やご意見を、できるだけ具体的にお書きください。個別の記事を取り上げる場合は掲載日付を示していただきますようお願いします。
 
 現在の日本の政治体制は、代議制による民主主義である。国会は、国民(=主権者)を代表する国会議員が法律を立法する場であり、この国会と国民を媒介するのがマスメディアの国会報道である、と見ることができる。国民の声はマスメディアによって増幅されて国会を動かし、また、新たな法律や国会の動向はマスメディアによって国民に周知される。ただし、この基本構図はマスメディアの姿勢によって様々に変容する。
 
 いわゆる「偽メール騒動」をめぐって、2月23日(木)朝刊第2面「木戸銭返せ、と言いたい」は、メール疑惑がもっと重要な問題の議論の障害になっていることを指摘し、同様に同第5面社説「送金メール」も、数々の問題がメール騒動で結果的に消し飛んでしまったと述べている。また、予算案の衆院通過後の3月3日(金)朝刊第5面社説「開店休業国会」は、これほど注目されない予算通過は近年なかった、原因を作ったのは民主党であると責任追及している。そして、「政界の関心」(3月3日(金)朝刊第1面)は民主党の混乱収拾と自民党総裁選に移ると報じ、「政府・自民党の関心」(同第3面クローズアップ)も国会対策から党総裁選へと軸足を移しつつあると報じている。
 
 たしかに3月1日(水)朝刊第1面余録は、永田町の粗忽噺で「国民の目」に言及し、3月3日(金)朝刊第5面社説も国民の不満について述べてはいる。しかし、国会と国民を媒介するマスメディアの基本構図において、上述の国会報道は、明らかに、国民(=読者=生活者)の関心よりも、「政界の関心」「政府・自民党の関心」の側にシフトしている。国民の関心事の1つである定率減税廃止の所得税法改正案の可決の報道はわずか数行(3月3日(金)朝刊第1面)であったし、児童手当の改定法案について、読者は国会報道とは別の紙面(3月2日(木)朝刊第13面)で初めて知ることになった。
 
 3月4日(土)朝刊第2面発信箱「シングルフォーカス」は、この間の国会の動向を冷静に俯瞰している。しかし、ドラマを見ているようで面白いがもっと大事なことがある、という指摘は、そのまま国会報道にも当てはまるのではないか。国会に対する記者たちの失望と不満は、国会報道に対する読者の失望と不満とパラレルな関係にある。「読みづらく、面白くない」国会報道を、退屈しない面白い記事にしようと腐心するあまり、政争やスキャンダルに記者の関心が集中し、国民(=読者=生活者)の関心が置き去りにされているのではないか。
 
 たとえ国会が「お子さま議会主義」(2月27日(月)朝刊第2面発信箱)であったとしても、国会報道がそれに同調する必要はない。「政界の関心」と「国民の関心」の間でバランスを保持しつつ自らの立脚地を堅持して、国民(=読者=生活者)にとって「もっと大事なこと」の内実を記者自身の責任で積極的に報道していただきたい。
 
 
 
【読者モニター(6)】
 
モニターの皆様へ
 
 謹啓 若葉の候、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。日頃、毎日新聞社にご支援ご協力を賜りまして、誠にありがとうございます。
 
 さて、次回の「毎日新聞読者モニター200人」(7月末掲載予定)のテーマが決まりましたので、ご連絡させていただきます。
 
  次回テーマは「ワールドカップについて」です。
 
 ワールドカップ・サッカーのドイツ大会は6月9日〜7月9日の日程で開かれます。日本は3大会連続3回目の出場です。4年前の日韓大会では、ワールドカップというものへの関心が日本列島に一大ブームとして広がり、トルシエ・ジャパンが熱狂的な応援の中でベスト16入りを果たしました。今回、サッカーの神様・ジーコが率いる日本代表チームは、海外経験豊富な精鋭選手を多数擁し、前回以上の活躍が期待されるところです。ドイツ大会への関心は5月から一挙に高まり始めると思われます。
 
 そこで、世界の一大イベントである「ワールドカップ」について、期間前から期間中まで、毎日新聞の報道ぶりに注目していただき、率直なご感想をお聞かせください。スポーツ面を中心とする多彩な企画記事、日本チームや各国の注目チームの戦況報道ぶり、結果分析、解説や注目選手、ファン、会場周辺の話題報道ぶりなどをご批評いただければと思います。
 
 回答については、同封の用紙1枚程度にまとめていただけますか。締切りはまことに勝手ながら7月11日(火)までに貴地の支局必着とさせていただきたいと思います。
 
 以上、お忙しいところを恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。
謹白 
2006年5月吉日 
毎日新聞社 
 
★回答用紙★
 毎日新聞の「ワールドカップ」の報道ぶりについて、率直なご感想やご意見を、できるだけ具体的にお書きください。個別の記事を取り上げる場合は掲載日付を示していただきますよう、よろしくお願いいたします。
 
 ワールドカップ報道は、サッカーというスポーツを買い被りすぎていないか。6月9日(金)朝刊第2面の「発信箱」は、「ボール1個と広場があれば、言葉の壁を超え、面白さを伝えられる」と見ているが、ジョギングなど、ボールすら必要としないスポーツはほかにいくらでもある。サッカーだけが言葉の壁を超えて面白いわけではない。「W杯は国際社会のあるべき姿を映し出す」という論点も偏っている。むしろオリンピックの開催こそ、そのような理念の王道であろう。1930年の第1回大会以来、W杯の歴史に国際情勢が色濃く反映していることを記者は調べていないのだろうか。

 日本代表チームに対する買い被りはさらにはなはだしい。1次リーグ敗退が決まった後、6月24日(土)朝刊の第1面「余録」、第3面「クローズアップ」、第5面「社説」は、いずれもこぞって日本代表チームに対する失望や落胆、不満を掲載している。「あまりの力の差にがっかりを通り越して情けなくなった」(同「社説」)という気持ちは、事前に「日本サッカーの実力」を正当に評価できていなかったことを図らずも露呈させている。完敗して初めて現実に気が付いたのである。

 6月15日(木)夕刊第9面「てれび指南帳」が、唯一このような買い被りを指摘していた。「テレビは煽り過ぎだぜ」「過剰映像の絵柄ばっかし」という批判は、何もテレビ報道にだけ向けられているのではない。「神様のいたずら心」(6月14日(水)朝刊第1面「余録」)や「奇跡」(6月24日(土)朝刊第3面「クローズアップ」)などの用語を使用する姿勢は、事実を尊重する報道姿勢からかけ離れている。マスコミの影響力によってサッカー人気を煽っていると言われても仕方がない。

 「「事実性原則」と「没評論原則」に基づく客観報道は新聞が読者の信頼を得る原点である」(7月4日(火)朝刊第4面「OB記者の目」)という認識は重いはずである。たかがスポーツの娯楽報道と思ってはならない。それにしても毎日新聞はどうしてこんなにワールドカップ報道に力を入れるのか。巨人の不人気で読売新聞から離れた読者層を、サッカー報道で毎日新聞に取り込みたいという経営戦略が透けて見えないだろうか。
 

 
 
【読者モニター(7)】
 
モニターの皆様へ
 
 謹啓 盛夏の候、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。日頃、毎日新聞社にご支援ご協力を賜りまして、誠にありがとうございます。
 
 さて、次回の「毎日新聞読者モニター200人」(10月末掲載予定)のテーマが決まりましたので、ご連絡させていただきます。
 
 次回テーマは「自民党総裁選」です。
 
 自民党総裁選は事実上、わが国の総理大臣を選出する選挙でもあります。焦点の人だった福田康夫氏が退いたことから、いまのところ安倍晋三、谷垣禎一、麻生太郎の3氏の戦いとなる見通しです。安倍氏の当選確実が言われる情勢ではありますが、9月20日総裁選、同月末召集見通しの臨時国会での首相指名、新政権発足までの動きを、どう報道するか。毎日新聞の報道ぶりに注目していただき、率直なご感想をお聞かせください。候補者や政策自体への感想ではなく、それらに対する報道の仕方について、ご批評をお願いいたします。
 
 回答については、同封の用紙1枚程度にまとめていただけますか。締切りはまことに勝手ながら10月10日(火)までに貴地の支局必着とさせていただきたいと思います。
 
 以上、お忙しいところを恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。
 
謹白 
2006年8月吉日 
毎日新聞社 
 
★回答用紙★
 毎日新聞の「自民党総裁選」の報道ぶりについて、率直なご感想やご意見を、できるだけ具体的にお書きください。個別の記事を取り上げる場合は掲載日付を示していただきますよう、よろしくお願いいたします。
 
 この度の自民党総裁選の本質は何だったのか。毎日新聞社の報道ははたしてその本質に肉薄できたのか。
 
 総裁選の告示を前にした9月5日(火)朝刊5面では、「政策論争が本格化した」と見て各候補者の政策を徹底比較するシリーズを開始している。同日の「教育改革」から始まって、「憲法改正」「アジア外交」「消費税引き上げ」「地方格差の是正」「少子高齢化対策」などのテーマが投開票日の前日まで続いた。選出された新総裁が直面することになる当面の課題を顕在化させ、各候補者の見解や姿勢を浮き彫りにしようとしている。
 
 このシリーズだけでなく、例えば8月23日(水)朝刊2面、9月2日(土)朝刊3面、9月9日(土)朝刊5面などでは、公平性に配慮しつつ要領よく整理された「比較表」を掲載して、各候補者の見解や姿勢をいっそう分かりやすく読者に提供している。西村晃一氏のイラストとともに、この「比較表」はこの度の総裁選の理解にとって貴重な手掛かりであった。
 
 ところで、これらの紙面から「政策比較」が毎日新聞社の報道のこだわりであるとの印象を受けた。そこには、出馬表明以前に「オール安倍」体制に近い状況が作られ、「こんな状況で真っ当な政策論争が展開される総裁選になるのか」(9月1日(金)朝刊5面「社説」)という懸念があったからに違いない。事実上わが国の総理大臣を選出する選挙で政策論争がないということはあり得ないはずだ、という強い思い入れさえ感じられた。
 
 しかし、そのような意気込みにもかかわらず、安倍氏の総裁選出を報じた9月21日(木)朝刊5面「社説」では、「国民人気が自民党議員の投票行動を終始一貫、左右した結果」であり、「政策論争が二の次となったのは、もはや当然だったのかもしれない」と総括せざるをえなかったのである。なぜか。
 
 小泉路線の負の遺産に対して各候補者がそろって修正を意識した発言をしていることについて、9月9日(土)朝刊3面「クローズアップ」は「対立軸がかすむ懸念も出ている」と見ていたが、そもそも対立軸は存在したのか。政策論争ははたしてこの度の総裁選の本質であったのか。他政党との対決ならいざしらず、同一政党内の代表者選出で各候補者の政策の違いを浮き彫りにしようとする意図は初めから見当外れだったのではないか。
 
 「人気」が左右した自民党総裁選のあり方が政治の本質を外れているのではない。政治の現実とはそのようなものであろう。むしろ毎日新聞社の論点の設定が、つまり「真っ当な政策論争」を追求するというかたくなな報道姿勢が、自民党総裁選の本質を見失わせてしまったのだ。
 
 
 
【2006年(平成18年)11月4日(土曜日)「毎日新聞」第22面】 発行所:毎日新聞西部本部 copyright 毎日新聞社2006
 
 
読者モニター 開かれた新聞
 
 ポスト小泉を決める自民党総裁選で圧勝し、安倍晋三首相が誕生しました。「毎日新聞読者モニター200人」では今回、その一連の報道について感想を聞き、188人から回答を得ました。総裁選そのものは盛り上がりに欠けたものの、「政策徹底比較」や「同時進行ドキュメント」などの企画記事が、「分かりやすい」「臨場感があった」との評価をいただきました。一方で「より厳しく権力を監視してほしい」などの指摘がありました。
 
政策比較にこだわり 西部ブロック
 
 …… 山口県の大学教授、西田雅弘さん(51)=政策比較が毎日のこだわりである印象を受けた。ただ、政策論争は今回総選挙の本質だったか。一政党の代表選で各候補の政策の違いを浮き彫りにしようとする意図は、見当外れではなかったか。……
 
 返信 モニターの皆様へ
 
 「総裁選は自民党という一つの政党内部の選挙にすぎないのに、どうしてそこまで紙面を割いて報道するのか」という疑問を持った方も多かったと思います。しかし総裁選は、同時に、首相を決める選挙でもありました。そこでまず、首相になるであろう新総裁がどんな人で、何を考え、何をやろうとしているのかを、読者にわかりやすく伝えることを心がけました。
 
 政治部として特に力を入れたのが、「同時進行ドキュメント」「安倍人脈」「検証」「政策徹底比較」などの企画記事でした。これらの記事に多くの読者から評価をいただき、読者の側にたって、わかりやすく伝えることがいかに大切かを改めて痛感しました。
 
 一方で、「より深くより鋭く」という記事への注文や、「権力監視の視点が欠けていた」との批判もいただきました。今後の政治報道の中に生かしていきたいと思います。【政治部長・丸山昌宏】
 
 
 何となく予感がしていた。自民党総裁選の読者モニター。手応えはあった。月が替わって、朝刊の紙面に意識的に目を走らせていると、ほらね、掲載されているでしょ。ほお〜っ。目覚めたばかりの気分がシャキッ。ま、結果論ですからこういうことも書けるわけですけど……。昨年の「闘論」に続いて2回目の採用。「見出しの「政策比較にこだわり」はお父さんの文じゃない?」という娘の指摘に、なるほどそうだね。
 
 読者モニターの仕組みについて考えてみました。わざわざモニターを依頼して委嘱状まで渡しておいて、委嘱期間中1回も採用しないということもないでしょうね。原稿を書く側の意欲が減退しますし、1回でも載れば、採用されたぜ、よしよしオレのいうことも聞いてるな、となるわけです。モニター総数200名として、1回あたり50件掲載とすれば、年4回ですから、単純計算でモニター1人あたり年1回掲載となるわけです。読者モニター200名というのはひょっとするとそういう計算かもしれませんね。
 
 原稿依頼は、その都度最寄り支局の記者さんが持参されます。新人若手の担当らしく、人事異動があるたびに新しい新聞記者さんに会えるので、結構楽しみです。しかし、人が替わるたびに、また最初から段取りの打ち合わせをすることもあり、その点はちょっと……。今回は、今までにない対応でした。締切直後、「要点をまとめたので確認してください」とのファックス。初めてのケースです。こんなふうになっていました。
 
 毎日新聞が各候補の見解や姿勢を整理した「比較表」は総選挙を理解する貴重な手がかりだった。政策比較が毎日のこだわりである印象を受けた。ただ、政策論争は今回総選挙の本質だったか。政党間の対決ならともかく、一政党の代表選で各候補の政策の違いを浮き彫りにしようとする意図は、見当外れではなかったか。
 
 なるほど、この原稿が読者モニターの編集部に行くわけですね。紙面の掲載と比較してみると、一部の省略以外はまったくそのまま。ふう〜ん、全文が届いているわけではないのですか。これまでもそうだったのですかねえ。まあ、支局の方に読んでいただくだけでも有難いのですけど……。もしそうだとすると、時間と労力をかけているわりには、あれ〜、という感じ。今回はこことここの支局から、という具合に、年1回の掲載を大臣ポストの派閥均衡人事みたいにやっているのでしょうか。
 
 実際の仕組みはわかりません。機会があれば支局の記者さんに伺ってみましょう。今年度は残りあと1回。来年度はもういいかな。後任の方を推薦しました。日頃の机上の文献研究ではなくて、現実の社会現象への直接的なかかわり、あるいは大学教員としての社会貢献、というニュアンスでお引き受けした読者モニター。月々の新聞代が浮くとはいえ、本気で取り組むと結構しんどいですわ。
 
【読者モニター(8)】
 
モニターの皆様へ
 
 謹啓 深秋の候、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。日頃、毎日新聞社にご支援を賜りまして、誠にありがとうございます。
 
 さて、次回の「毎日新聞読者モニター200人」(来年1月末掲載予定)のテーマが決まりましたので、ご連絡させていただきます。
 
 次回テーマは「読者参加型の新聞作り」〜「みんなの広場」「万能川柳」「女・男の気持ち」です
 
 毎日新聞は「読者参加型の新聞作り」の一環として「みんなの広場」(オピニオン面、日〜金曜)、「万能川柳」(第3面、毎日)、「女・男の気持ち」(生活家庭面、毎日)を設けています。いずれも新聞を作る側でなく、読者の視点から生活随想や社会批評などを書いていただく投稿コーナーです。
 
 インターネット時代の到来で「生活者発信情報」の重要性が注目されてもおり、次回は、この「読者参加型の新聞作り」ということへの感想や意見、あるいは各投稿コーナーそのものへの感想や意見をお聞きしたいと思います。各投稿コーナーへの感想・意見を書いていただく場合は、個別特定の記事・作品を批評する形ではなく、「みんなの広場は……」などといったふうに総括的な批評の形にしていただければありがたいです。
 
 回答については、同封の用紙1枚程度にまとめていただけますか。締切りはまことに勝手ながら1月10日(水)までに貴地の支局必着とさせていただきたいと思います。
 
 以上、お忙しいところを恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。
謹白 
2006年11月吉日 
毎日新聞社 
 
★回答用紙★
 「読者参加型の新聞作り」ということへの感想や意見、あるいは各投稿コーナー(みんなの広場、万能川柳、女・男の気持ち)そのものへの感想や意見をお書きください。各投稿コーナーへの感想・意見を書いていただく場合は、個別特定の記事・作品を批評する形ではなく、「みんなの広場は……」などといったふうに総括的な批評の形にしていただければと思います。
 
 「仲畑流万能川柳」には毎朝必ず目を通す。読者参加型の新聞作りとして、毎日新聞が世の中に誇れる珠玉のコーナーである。しかし、川柳という独特な表現様式には固有の作法があり、またそれなりのセンスも要求される。誰もが皆、選者の目にかなうわけではない。つまり読者が参加して存在感を示すには一定のハードルを越えなければならない。この点に読者参加型としての「万能川柳」の限界がある。

 「みんなの広場」「女・男の気持ち」では、そのようなハードルは低いと思われる。読者が日々の思いをありのままに自分の言葉で発言できるのは、オーソドックスな投稿コーナーならではであろう。とりわけ世の中の少数意見の掲載は貴重である。しかし、12月31日(日)朝刊第5面「投稿デスクから」によれば、「みんなの広場」の投稿者の中心は高齢者や主婦層に偏っている。2006年の年間投稿1万3210通は果たして読者の何%をカバーしているのか。投稿しない読者の方がはるかに多いことは言うまでもない。

 毎日新聞は「読者参加型の新聞作り」ということでいったいどんなことをイメージしているのか。曖昧でよく分からない。「読者の視点」と思い込むところに落とし穴はないのか。投稿がプロの記者の視点や感性ではないにしても、それの取捨選択、タイトルの付け方などはまさに新聞を作る側の視点である。「読者の視点」は新聞社による新聞作りの道具の1つにすぎない。しかも近年この「読者」のあり方が著しく変容し始めている。

 12月30日(土)朝刊第2面「発信箱」の記者は、「相手が取材された内容を、直後にブログの日記やネットの掲示板に書き込む」ことや、「記者個人の名前や取材の仕方が不特定多数の人々にさらされる」ことにネット社会の怖さを感じている。しかし、インターネット時代の「生活者発信情報」とはまさにそういうものである。「記者」と「読者」は固定的なものではなく、「読者」は同時に「記者」にもなり得る。「読者参加型」が曖昧になる所以である。

 読者参加は新聞作りの派生的な部分であってその本質ではない。読者参加型によって読者に迎合していると見られることは、毎日新聞の本意ではないはずだ。「生活者発信情報」という時流に惑わされてはならない。新聞の読者は、プロの新聞記者の視点と感性を紙面に期待しているのである。