真庭市と言われてもピンとこないでしょう。蒜山高原や湯原温泉と言った方がイメージがわくかもしれません。2005年の町村合併によって、鳥取県境に接するこんな山間地にも市が誕生。行政単位の「市」は必ずしも「都市」ということではありません。
 
 高速道路の米子道の長いトンネルを抜けると湯原IC。料金所を出て国道313号線のT字路を湯原温泉方面に右折。小さな支流にかかる橋のたもとに「←郷緑温泉」の標識。左折して上流に進むと程なく道路わきに「歓迎郷緑温泉」の大きな柱。【画像上】反対岸の山手に見える農家のような建物が目的地の郷緑館。
 
 
    
 
 
 橋を渡るとビニールハウスのような水槽。【画像上左】中には亀らしき動物。ほお、ここですっぽんを養殖しているのですね。郷緑館はすっぽん料理が有名です。実は今回、温泉だけでなく、これもお目当ての1つ。楽しみだなあと思う間もなく駐車場。近づいて下から見上げるとお城のような城壁。【画像上右】手前の石段を登り詰めると白いのれんのかかった玄関に到着。【メインページ】玄関の向かいにはお灯明の点ったおやしろ。薬師如来かな。
 
 愛想がいいとは言えない(失礼!)無口なおやじさんに案内されて2階の小部屋へ。夕食にすっぽんのフルコースを予約していました。温泉はそのおまけみたいなものですが、当方にとっては、むしろすっぽん料理の方がおまけ。「先にお風呂に入らせてください」。再び案内されて玄関横の浴室へ。男女の別はなくいわゆる家族風呂。先客がある場合は待たなければいけません。30分500円の手書きの張り紙。日帰り入浴は午後4時まで。訪問したのは平日の夕方でしたから、もちろん先客はなし。
 
 
    
 
 
 入浴前にまず浴室のチェック。並んだ浴槽が2つ。どちらも立派な石造り。大きい方の底をのぞくと緑がかった岩盤に割れ目が見える。おおっ、これがかの有名な足元湧出の源泉かけ流しかあ。湯口がないのに浴槽の縁からお湯が溢れている。すごいぜ!もう一方のやや小さい浴槽は明らかに循環。湯口から沢山お湯が出ているのに溢れるお湯はありません。よく観察すると底に吸入口。加温された上がり湯ということらしいです。
 
 洗い場のカランもありますが、浴槽から離れた窓側。石鹸はここで使用するようにとの注意書き。源泉の浴槽から溢れ出たお湯を回収して、加温、循環の浴槽に利用しているのかなと推測。浴室内には「郷緑温泉歴史」という掲示があり、寛永2年(1625年)に本庄村の某農夫が発見したこと、各種の病状が全治したこと、「薬師如来の御恵み」と薬師如来を祭ったことなどの記述があります。皮膚病、毛虫ノ刺傷、草マケなどの泉質効能はいかにも農民の温泉を思わせます。元は「郷六」だったとも。こんなふうに気ままに観察や写真撮影ができるのは、貸切の家族風呂方式ならでは。他人さまのいらっしゃる普通の浴室ではこうはいきません。
 
 さて、いよいよ源泉足元湧出の温泉につかりましょう。やや冷たい感じですが、堪えられないというほどではありません。感動的な透明感。泉質は、やさしく皮膚にまとわりつく感じで、気持ちよく長湯ができます。岩盤の割れ目に足を近づけると、水流の影響からか気泡が沢山出てきます。一部分に温かさを感じますが、ここがメインの湧出箇所なのでしょうか。そのまま口元まで顔を沈めて味覚チェック。やや甘みがあるかな。う〜ん、すばらしい〜。このままずっとこうしていたい……。
 
 
    
 
 
 部屋に戻るとすでに料理が運ばれています。すっぽんの刺身、内臓のスライス、そして生血。【画像上左】先のおやじさんが次々運んできます。「浴槽がすばらしいですね」とよいしょすると、無愛想な表情の口元に笑みが見えました。もっとワイルドな料理をイメージしていましたが、予想に反してとても繊細。ちょっとずつ種類がたくさん。味もあっさり。コラーゲンたっぷりの鍋に続いて、最後は雑炊。【画像上右】もう食べ切れません。満腹。
 
 料理もさることながら、やはり郷禄館は温泉がすばらしい。快適に入浴できる適温の源泉が足元から湧出しているなんて、これはもう奇跡でしょう。「薬師如来の御恵み」と言われるのもうなづけます。げに、この割れ目はありがたい。ところで、如来さまって女性?
 
 
ここから湧出 至宝の温泉