2004年の周辺4町との合併によって新しい下関市の温泉地は20箇所近くにもなりましたが、旧下関市内にも温泉があります。日乃出温泉。いわゆる街中の銭湯ですが、れっきとした温泉。この地域は明治期以降の埋立地。かつて源平合戦の武士たちも身体を癒したという温泉の湧出する岩礁があったそうです。埋め立て後、その場所を掘削して温泉が湧出したというわけ。街中で、しかも360円の銭湯料金で温泉を堪能できます。
 
 
    
 
 
 日乃出温泉はJR下関駅から彦島へ向かう道路のそばにあります。最初私は道路に面しているものと勘違いして、探し回って行きつ戻りつしましたが、実はこの道路から角を曲がった路地に面しています。「ハヤシカネ」の看板のあるENEOSのガソリンスタンドが目印。(画像左)駅から車で数分。歩いても10分程度。このガソリンスタンドの角の電柱に「日乃出温泉→」の看板。(画像右)
 
 ネオンサインや看板がなければ、普通の民家と見間違う建物。残念ながら駐車場は不十分。路上に入浴客の車が並びます。入口の前に目隠しの立ち木。中に入るといかにも銭湯という感じで男湯と女湯を見渡す番台。脱衣場の壁に「源泉100%かけ流し」の掲示。期待感が募る。しかし、分析表には「加温」「循環」「塩素」。ん?浴室に入ると疑問は氷解。加温された長細い浴槽と並んで、小さな四角いかけ流しの浴槽。
 
 この小さい方が「源泉100%かけ流し」。加温されていないのでかなり冷たい。むしろサウナのあとの水風呂という感じ。しかし、湯口に顔を近づけると明らかにそれと分かる硫黄臭。おっ、温泉だぜ!でも、味覚、肌触りは感じられません。身体が冷えると隣りの加温の浴槽へ。銭湯だけあって、やや旧式ながら洗い場のカランが多数。
 
 
    
 
 
 湯上り後、周辺の散策。入口の横には「適応症」の列記とともに「下関で唯一の天然温泉浴場」の文字。(画像左)「唯一」がちょっと気になりますが、まあいいことにしましょう。反対側の壁面には何やら堅苦しい掲示。(画像右)「ここは温泉源(鉱泉権井戸)所有地です」。まさに自家源泉というわけですが、どうやら近くでボーリングやくい打ちをするなということのようです。当方には「源泉地盤所有権」「採取設備所有権」「温泉利用権」があるのだぞというわけです。
 
 そんなに権利を振り回さなくてもという気もしますが、何せ街中ですから、これまでにもこうして権利主張をしなければならない事態に直面されたということかもしれません。地盤に影響があると、源泉をウリにした銭湯としては死活問題ですからね。自然の恵みである温泉が権利問題にすりかわってしまうところに人間社会の特質を見ることもできます。私はこういうのは苦手です。(^^;
 
 
 
 
 建物の裏手に回ると、おっ、あれは何だ? そうです、煙突です。これこそ銭湯の象徴。現在使われているのかどうか確認できませんでした。裏手に回ったついでに大通りの横断歩道を渡って向かい側に行くと、そこはJRの車両基地。札挿に「関」の入ったEF65やEF66を見ることができます。「あさかぜ」に使用されていた24系客車、山陽本線や周辺支線で活躍している115系、105系などの電車もあります。フェンス越しにいつまでのぞいていても飽きませんよね。鉄道趣味の温泉好きには二度おいしい、そんな魅力の日乃出温泉。
 
 
下関車両基地のEF5910(2006年7月)