「TVチャンピオン」の全国温泉通選手権で3連覇の郡司勇氏。その著書『秘湯、珍湯、怪湯を行く!』の「ヌル湯」の章で、山口県で唯一紹介記事のある持世寺温泉。そのほかの県内温泉は名前だけ。郡司氏は山口県の温泉に好感をお持ちのご様子。加熱浴槽のほかに源泉そのままの浴槽を備えた温泉が多いとか。へえ〜、言われてみればそうかもしれませんね。本を読んで、早速持世寺温泉へ。施設は2つありますが、今回はポピュラーな上の湯ではなくて杉野湯。
 
 赤い「上の湯」の看板を目印に国道2号線から地方道へ。山陽新幹線の下を通過して山陽本線と平行して走っていると、「←持世寺温泉」の標識のある踏切。この踏切を渡るとほとんど人家のないのどかな田園風景。まもなく厚東川にかかる橋。この橋が要注意。【画像下左】調子よく走って来たものの橋の上だけ幅員が狭く、対向車との離合が困難。おっとと、という感じ。長さもあり、適切な状況判断が必要……。ま、ちょっと大袈裟ですかね。心配することはありませんよ。(笑)
 
 
    
 
 
 橋を通過して再び快調に走り始めたところで、左手前方に赤い「上の湯」の看板とその施設が目に入ります。【画像上右】お、あれが上の湯だな。自ずと意識はそちらに集中。で、上の湯の入口に到着して、はて、杉野湯は? あたりを見回してもそれらしい施設は見当たりません。近いはずなんだけどなあ。もう少し先に行ってみようか。そして道はどんどん山の中へ……。杉野湯の入口を通り過ぎてしまうとこうなります。いえ、こうなりました。あはは。
 
 上の湯に気付いたところがポイントです。その地点で右の木立に意識を集中しましょう。【再び画像上右】この大木が杉野湯のシンボル。杉野湯にもかかわらず、クスの木らしい。(笑)この大木の奥に施設があります。初めてだとたしかに分かりにくいかもしれませんね。駐車場というほどのものではなく、空き地に車を置く感じ。
 
 
    
 
 
 奥に進むと、手前の建物の窓の1つが受付。足元にはお持ち帰り用の源泉の蛇口があります。料金を払って浴室の入口へ。「営業中」の札がなければ一般の民家の玄関と変わらない感じ。【画像上左】ガラガラガラ。引き戸を開けて中に。下駄箱に履物を入れて廊下に上がると、すりガラスに「男湯」の文字。【画像上右】時代を感じさせるこの作り。左手には同じくすりガラスに「男便所」。利用させていただきましたが、簡易水洗、つまり汲み取り式。懐かしいなあ。
 
 浴室にはタイル張りでかけ流しの浴槽が2つ。源泉のままの冷たい浴槽と加温したかなり熱い浴槽。最初熱い方に入ってみましたが、これが耐えられません。「熱いですねえ」。先客に声を掛けると、「今日は熱すぎ」とのこと。それで、もう一方に入り直すと、こちらはほとんど水風呂。当初はほてった身体に心地よいものの、やがてあたたかさが恋しくなって、再び加温の浴槽へ。こちらも当初は心地よいものの、やがて……。これを何度か繰り返すうちにクラクラし始め、打ち止め。
 
 源泉の浴槽の湯口(=蛇口)にはコップが置いてあり、飲泉可能。温泉らしい「溶存物質」の味わい。どう表現したらよいのか、目下勉強中です。しかし、はっきりそれと分かる硫黄臭。なるほどね。ニンマリ。郡司氏によると、上の湯よりこちらの杉野湯の方が硫黄臭が多いとか。でも、浴槽からは感じられませんでした。
 
 杉野湯訪問の一番の目的は湧出する源泉の確認。各種の温泉情報誌によると、源泉が湧出しているまさにその状態を確認できるらしい。そういう経験はまだありません。「源泉はどこですか」。いつものように受付で尋ねてみました。「そちらです」と示された場所には、隣接して屋根だけ小屋掛けされた場所があり、一段下がったところに水路が流れています。しかし、周囲にはブロック塀があり、しかも入口の格子にはしっかりカギ。
 
 
 
 
 あれれ、これじゃあ湧出状況を確認できません。そこでさらに、「中に入らせていただけませんか」。申し訳なさそうに「もう人を入れないことにしました」。はあ。「以前は開放していましたが、夜中に勝手に温泉を取っていくヤツがいて、警察に突き出しました。それでもう……」。温泉泥棒ですか。う〜ん。「撮影はしてもいいですか」。パチリ。この蓋の下で源泉が湧き出している……。【画像上】残念ながら目的は果たせませんでした。
 
 入浴剤を入れていたとか、水道水の沸かし湯だったとか、一時期、温泉経営者の倫理が問われ、厳しい批判が浴びせられました。しかし、逆に温泉利用者の側でも勝手に源泉を盗んでいたりするわけです。世論、とりわけマスコミの報道姿勢は片寄っていますよね。源泉を盗まれて困っている温泉経営者の報道はしないわけですから。どうしてでしょう。そういうニュースは商品にならないからでしょうね。湯上りのホカホカした身体をさわやかな五月晴れの風にさらしながら、ちょっと複雑な思いで帰途についたのでした。
 
 (おまけ)当日はもう自宅の風呂に入りませんでした。身体のホカホカ感は翌日も持続。でも、血圧の高い方には、熱いお湯はお勧めできないかもしれませんね。私でもクラクラしましたから。それと飲泉。調子に乗ってゴクゴク飲むといけません。便秘に効果があるということは、便秘に縁のない当方は、その後……。(^^;