川棚温泉と言えば、下関の奥座敷という感じの温泉地。我が家も数年前まで川棚グランドホテルの露天風呂に足繁く通ったものでした。でも、改装して敷居が高くなり、それ以来ご無沙汰。お嬢さまの豪華風温泉の要請に応じて、本当に久しぶりに川棚グランドホテルの露天風呂に行きました。
 
 温泉分析表はお風呂の受付の壁に掲示。施行規則の追加事項もあります。「加水」「加温」「循環」「塩素」。ま、そうでしょう。気になったのは源泉地の地番。思い切って尋ねてみました。「この地番はどのあたりなのですか」。「ええと……。小天狗だったか、清竜泉だったか、そこからお湯を引いています」。はあ?小天狗も青竜泉も地名ではなく、温泉施設。同業からお湯をもらっているのですね。
 
 青竜泉は、いわゆる銭湯。以前、改装してきれいになった後一度行きましたが、人が多すぎてうんざり。二度目はありません。もう一方の小天狗は、温泉本で頻繁に名前を目にするものの未体験。川棚温泉全体の給湯システムも気になりますので、日を改めて小天狗へ。
 
 
 
 
 「歓迎川棚温泉」の看板を通過すると温泉街。狭い道を、数回折れ曲がりながら車で進み、青竜泉に到着。施設も新しく、また温泉地の銭湯だけあって、お客さんが絶えない模様。そこから隣接の建物にさらに目を移すと、こちらは小天狗。看板や建物に一世代前の雰囲気。うぐっ、ホンモノ温泉の知名度がなければ訪問を躊躇するかもしれません。実際、同行した豪華風指向の奥さまには明らかにためらいの表情。思い定めて玄関を入りました。
 
 
    
 
 
 浴室は男女が入れ替わる仕組み。訪問したときは、紹介本に登場する浴室がたまたま男湯。時間帯もあって貸切状態。お、ラッキー。室内には、かけ流しの四角い浴槽。外には透明屋根付きの露天風呂。これもかけ流し。いずれもそんなに広くはありません。お湯は、素人目には、あっさり、さらさら系で、これといった特徴を見出せません。香りも分かりません。でも、風呂上りの感触は確かに温泉。
 
 奥さまが上がられるのを待つ間、フロントでお話を伺いました。着物姿ではありませんが、お話のスタンスや内容からすると、おそらく女将さんでしょう。「源泉地はどのへんなのでしょうか」「露天風呂のすぐ横です」。ほお、いま入ったばかりの露天風呂、岩の上から熱くて触れないほどのお湯が流れ込んでいました。【上右画像の左寄り部分】そのほか、もろもろお伺いした内容は次のようなこと。
 
 川棚温泉の源泉は小天狗と青竜泉の2箇所。小天狗は湧出量の半分を自前で使用、残りの半分を清竜泉に提供し、青竜泉では、それを自前の源泉と混合して使用しつつ、さらに川棚温泉の他の旅館等に配給……。川棚温泉全体の給湯システムはこんなことらしいです。グランドホテルの話とも符合します。小天狗では、冬場に加温することはあるものの、それ以外は加温も加水もなく、貯蔵タンクもない、とか。
 
 失礼とは思いつつ、さらに踏み込んでみました。「建物の改築、規模の拡大を考えていらっしゃいますか」「もちろん、考えないことはありませんが、お客さんが増えるとお湯が汚れてしまいます。温泉の湧出量に見合った浴槽の大きさは、現状が限界です」。ほおお、経営の視点を持ちつつ、温泉の質を大切にされている姿勢がストレートに伝わってきます。「一般にはあまり知られていないので、お客さんもそんなに多くありません。ほとんど常連さんばかりです」とも。
 
 温泉の質を真剣に守っていきたいという決意のようなものを感じます。と同時に、源泉を持つ宿として、温泉街全体との関係もありそうです。ちょっと考えただけでも様々な問題が予想されます。どこの温泉地にもあることかもしれませんけどね。ホンモノ温泉指向が浸透して、お客さんが増えたときの取り組みがポイントかもしれませんね。あ、これは余計なお節介。失礼。
 
 当方としては、初めて、温泉の質にこだわって大切にしようと思っていらっしゃる方と直接お話ができて、ちょっと感動。(女将さんのファンになってしまうかもしれませんよ。くふっ)。おっと、奥さまが上がって来られたので、お話はオシマイ。「これからの温泉は、湧出量に応じたホンモノ温泉が趨勢になりますよ。がんばってください」、とお話して小天狗をあとにしました。玄関で見送りを受けながら。
 
 
 
 
〔おまけ〕 温泉好きの知人から宿題が出ていました。「温泉に入ると○○○があたたまってとてもいい気持ちになるんじゃが、女の人はどこがどうなるんじゃろうか」。素朴で素直ないい疑問です。私も同感(笑)。おおっぴらには尋ねにくいので、コソッと奥さまに聞いてみました。でも、どうも要領を得ません……。返答ができずに困っていたところ、川棚温泉にその答えがありました。
 
 山口県生まれの有名な詩人、種田山頭火(1882-1940)も同じ疑問を持っていたようです。川棚温泉がことのほかお気に入りで、長期滞在しただけでなく、死場所にしたいとまで思っていたようです。その山頭火がこんな詩を残しています。これで宿題の答えになりませんか。
 
 
ちんぽこもおそそも湧いてあふれる湯 (山頭火)