霧島温泉郷から国道223号を東方面へ。丸尾の滝を過ぎてしばらくすると林道風の山道への入口。「湯之谷山荘」の看板がなければ、気にも留めずに通り過ぎてしまいそうです。対向車が来ないことを祈りつつ、車一台がやっと通れる谷川沿いの山道へ進入。路肩の苔むした石積みが歴史を感じさせます。
木漏れ日の木立の中を進んでいくと、やがて行き止まり? いえ、180度のUターンカーブ。切り返しをしないと回れません。ここにも「湯之谷山荘」の看板。方向転換すると前方にそれらしい建物が見えます。本当に山中の一軒屋ですね。
宿泊施設らしい2階建ての建物の前を通り過ぎ、湯之谷山荘の玄関。その隣に駐車場がありますが、ここは軽自動車用。さらにその奥にも駐車スペース。放し飼いの子犬が数匹たむろしています。受付で入浴料を払って玄関奥の階段を上がります。斜面の上方に別建物の浴室があります。
のれんをくぐると簡素な作りの脱衣所。浴室の入口に引戸などはありません。中をのぞくと、おっ、床全面が板張り。互いに接した木製の湯船が3つ。いわゆる湯治場のイメージでもありません。滑り止めと排水のためと思われる床板の斜めの切り欠きラインはデザイン性すら感じさせます。
2つの源泉との触れ込みですから順番に試してみましょう。まず一番奥の比較的広い湯船。温度はかなり高めの硫黄泉。最初はピリピリしてもやがていい感じに。次に、手前の小さい湯船。こちらの温度はやや低め。熱いお湯から移ると冷たく感じます。湯口からはお湯とともにシュワシュワの気泡。口に含むと明らかに炭酸泉。
そして中央の浴槽。ん?これには給湯の配管がありません。よお〜く観察すると、両隣に接した2つの湯船からあふれ出た湯が流れ込んでいるだけのようです。一方の熱いお湯ともう一方の冷たいお湯。この両方が流れ込んで心地よい温度に仕上がるという趣向。へえ〜、思わず感心してしまいました。
先客が1名ありました。高齢のご老人。挨拶だけは交わしたものの、あれこれ湯船を出入りする落ち着きのない当方を意に介さず、微動だにせず知らん顔。しかし、さすがに同じ湯船で隣に並ぶと重い口が開きました。「自民党は長期政権でうぬぼれてしまった。反省しないといけない。民主党は経験がないので、まだこれから勉強しなければダメ」。どうやら話題は目下の衆議院選挙(2009年8月30日投開票)。
「日本の繁栄を築いてきた老人を大切にしない政策は間違っている。大切なのは家庭。子供の教育……、云々」。無駄のない言葉が淡々と続き、しかも受け売りや嫌味はありません。事柄の本質を突いています。むむっ、この老人ただ者ではないな。そう直感しました。湯之谷温泉には、世俗を超越して政治を語る仙人が住んでいらっしゃる。
長湯の苦手な当方が脱衣所に向かおうとすると、「もう上がるのですか。温泉は2時間入らないと……」。どうやら温泉の達人でもいらっしゃる模様。おみそれいたしました。
