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15インチゲージのC11328があるのは、静岡県伊豆市修善寺の「虹の郷」。園内を周回するロムニー鉄道の機関庫。英国タイプのカラフルな蒸気機関車やジーゼル機関車の中で、国鉄型の蒸気機関車はちょっと場違いな感じ。客車を1両連結。小川和博課長さんから、導入の経緯などについて詳しい話を伺いました。
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ボイラーは労働基準局の認可済み。ただし、元来スケールモデルとして製作されているので、通常の運転には使い勝手がよろしくないとか。狭火室でしかも水タンクが小さい点は、運転会で苦労する3.5インチのC11と同様らしい。活躍の機会に恵まれない。検査のたびの分解整備の負担を軽減するために、現在は休止の届けをしているとのこと。申請すればいつでも走行可能になるらしいです。解説板には、次のような内容が記されていました。
「C-11」は日本を代表する蒸気機関車で、1932年(昭和7年)から1946年(昭和21年)の14年間に381両造られました。主に都市近郊の旅客・貨物用として活躍しました。
主要仕様
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忠実なスケールモデルだけあって、全体の印象は実車そのもの。ただし、3.5インチライブスチームのように、牽引する台車から操作するわけにはいきませんから、人が乗れる構造にする必要があります。運転室のドアはなく、天井もドアのラインまで。石炭庫部分が運転手のためのスペースになっています。安全弁は、規制上、オリジナルとは違った形状。また、単式空気圧縮機は取り外されていました。
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細部を観察してみると、このC11328は必ずしも328号機を忠実に再現しようとしたものでもなさそうです。前照灯(シールドビーム)、煙室扉周囲の手摺り(1箇所のみ)、煙室扉ハンドル(平板十字)、連結器解放テコ(屈曲しないT字)、運転室丸窓(なし)など、328号機固有の特徴が見られません。最も大きな違いは水タンクです。
C11は、いわゆる3次型以降、水タンクが増量されて、サイドタンクとリヤタンクが大きくなります。2次型までは、キャブの下辺と一直線だったサイド水タンクが一段下に下がるところが大きな特徴です。328号機はもちろんこの増量タイプ。しかし、虹の郷のC11328の水タンクは、2次型以前の特徴を示しています。
推測の域を出ませんが、スケールモデルの元になった図面は2次型以前のものだったのかもしれませんね。しかし、金沢工業大学の村田教授の念頭に七尾線のC11328があったことは間違いないでしょう。その証拠に、C11328のナンバープレートはとても忠実に再現されています。「2」のくちばし部分が水平になるところ、「8」の上穴が小さいところなど、数字のデザインは本物そっくり。
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こうして人と並ぶと15インチゲージの機関車がどれだけ大きいかお分かりいただけますよね。
もし私が可部線の無電化沿線で生まれ育たなければ、もし広島機関区のC11328が七尾線に移籍していなければ、もし小川精機が国鉄型C11のライブスチームキットを販売していなければ、もし私がそれを組み立てて328号機に改造しようと思わなければ、もし金沢工業大学の村田教授が15インチC11を製作して328の機番を付けなければ、そして、もしそれが虹の郷に貸与されて公開されていなければ……。いくつもの偶然の積み重ねがあって、私はこうして虹の郷にやってくることになったわけです。なんだか運命的なものを感じますよね。
その後、金沢工業大学の村田外喜男教授について調べていたところ、Rail Magazine No.24(1985年12月号)に投稿記事があることを発見。早速、インターネット通販で手配して入手。それは、1/5のC57製作の紹介記事でした。
金沢工業大学機械工学科教授 村田外喜男「1/5スケールのC57」(Rail Magazine No.24(1985年12月号)、企画室ネコ、pp.98-101)。この記事でいくつかのことが判明。金沢工業大学では、創立20周年記念として1/5のD51を製作し、それにつぐ25周年記念行事として旅客用のC57を製作しています。そうすると、15インチのC11はさらにその後の取り組みということでしょうか。C57のボイラーは労働基準局の認可を受けていて、この点は上述のC11についての小川課長さんのお話と符合します。
C57には空気ブレーキが採用されています。圧縮空気を供給するために、医療用の酸素ボンベを元空気ダメに使用。「エアの消費は僅かなもので、3日間位のイヴェントで、相当派手に使っても7Lボンベ1本分で十分足りてしまう」。分かりましたよ。虹の郷のC11の石炭庫にもボンベがありました。えっ、ガス焚き? という印象でしたが、これは空気ブレーキ用のボンベだったのですね。そうすると、単式空気圧縮機はダミーだったのでしょうか。配管もしてあったように思いましたが……。
ちなみに村田外喜男教授は、特にSLファンというわけではなく、最初は「ピストン・ヴァルブ」と「スライド・ヴァルブ」の構造の違いも分からず、蒸気機関車について零から勉強されたとのこと。また、C57と合わせて、トラ、トム、チキ、ヨの貨車群、オハ、オハフの客車も製作されています。
可部線のC11328が、直接には縁のない静岡の修善寺にあることの経緯はある程度理解できました。こうなると次のターゲットは「金沢工業大学」ということになりますかね。328という機番でありながら2次型以前のサイド水タンクの特徴を持っているのはなぜなのでしょうか。七尾線のC11328号機と金沢工業大学はどんな関係があったのでしょうか。そもそも金沢工業大学機械工学科ってどんなところなんでしょうか。興味とナゾは深まるばかりです。これはもう金沢を訪れるしかないですね。マジっすか?(つづく)