〔シリンダー排水弁の修理〕


出典:小川精機「組立説明書」

 ピストン弁の再調整のような深刻な事態にならなければいいのだが。最悪の事態も想定しながら観察と点検をすすめる。機関士のいる公式側、つまり前進方向左側のドレンは勢いがいい【画像下】。しかし、非公式側、つまり右側のドレンは勢いがない。というかほとんど出ていない感じがする。シリンダーから排水されていないとなれば事態はとても深刻だ。


 最初の点検箇所はシリンダー排水弁あたりかな。運転室の逆転機の下に排水弁のレバーがある【下左画像矢印】。これを上下に動かすといくつかのテコを介してシリンダー下部の排水弁開閉腕が前後に動く仕組み。左右同時に動くので同じ位置にあるはずなのに……。あれれ、右側は大きく後ろに振れている。しかも指でも前後に動いてしまう【下右画像白丸】。ホームページのトップ画像でも確認できる。→こちら

   

 どうやらこの開閉腕の動きに問題がありそうだ。開閉腕を動かしているのは縦に長い左右の作用腕【冒頭図面 CY-34】。左側は問題ないので、おそらく右側の作用腕をシャフトに固定しているネジが緩んでいるのではないか。これが不具合の原因に違いない。ネジの増し締めだけで済むならラッキーだ。ケージに入った定置場の機関車をリフトアップして作業がしやすいようにする。もちろん斜交いを外しておく【下画像】。


 ピストン棒の上、滑棒取付位置の奥、作用腕の上端にキャップスクリューの頭が見える【下左画像白丸】。これを六角レンチで増し締めするわけだが、そう簡単ではなさそうだ。組立の際は台枠だけだったので邪魔になるものはなかった。完成後は滑棒やピストン弁案内などが邪魔をして、ネジの頭にレンチを入れることすら難しい。ピンセットを使って辛抱強く試みてやっと入ったと思ったら、干渉してレンチが回せない【下右画像矢印】。

   

 クロスヘッドや加減弁などのパーツを取り外して作業するほどの元気はない。さてどうするか。六角レンチを短くカットして専用のジグを作るか……。う〜む。禁じ手とは思いつつ、ラジオペンチの先を入れ込んでキャップスクリューの頭を挟んで力を入れてみた。おっ、手応えがあった。ネジが締まった感じ。

   

 運転室のレバーを上げると排水弁は後ろに、下げると前に動く【上画像】。以前のように真横になることはない。左右が同じように動いている。完全に修理できた保証はない。また以前のようになるかもしれないが、とりあえずこれでどうだろう。スチームアップして確認したい。