〔雨樋の取付(その1)〕
 
 
 
 ディテールの工作を始めると、どうしても実車の情報がほしくなります。手元にあるのは、くじゅうエイドステーションのワフ写真だけ。しかし、世の中にはいろんな方がいらっしゃるもので、各種の貨車の画像を収集してホームページで公開されている方もあります。日頃、参照させていただいているのは、主に次のホームページです。ここに掲載してお礼を申し上げます。今となってはとても貴重な画像ですからね。あ、それと、私が金属加工の師匠と仰ぐミスターMにも感謝の気持ちを。専門家として適切な助言をいただいています。このところご登場いただいていませんが、これについてはワフ完成後にまた改めて。
 
 
新貨車工房 http://www.shinkasha.com/
汽車道楽の部屋 http://cortina.hakuba.ne.jp/~natsume/index.html
貨車ホームページ http://www2s.biglobe.ne.jp/~r_shiina/index.html
 
 
 さて、雨樋の曲げ加工。こんなふうに考えてみました。平板を円弧状にするには丸棒に押し当てて曲げ加工すればよい。半径2.0mmなら直径4.0mmの丸棒。ただし、1.0mmの平板では厚すぎるので0.5mm。それも、真鍮板より銅板の方が曲げやすい。丸棒にはステンレス丸棒を使用。基本的にはこの方針で。
 
 しかし、丸棒に押し当てるといっても、平板は長さ322mmという代物。こんな帯材を4.0mmの丸棒に押し当てて実際に曲げ加工するにはどうすればいいのでしょう。そもそも丸棒自体をどのように保持するのでしょうか。同時に平板も丸棒に密着させておかなければいけません。どんなジグが必要なのでしょうか。う〜む。
 
 いつも行くお店の素材コーナーで、アルミLアングルと丸棒を組み合わせながら思案。試行錯誤の末、ピンポーン!とひらめきました。厚さ2.0mmのLアングルを重ねるとその厚み分だけ段差ができます。これを左右2つ合わせると、その間にちょうど4.0mm丸棒の入る溝ができます。ここに丸棒を保持。片方のアングルに帯板をはめ込んで固定し、丸棒に押し当てて曲げ加工。これでどうでしょう。【画像左】
 
 
    
 
 
 曲げ加工後の円弧の形状を確認して帯板の幅を決めたいので、早速いくつか試作品。えいや〜、と力技。雨樋のJ字の直線部分3.0mm、円弧部分7.5mm、したがって帯材の幅10.5mmに決定。本番では平板の長さを322mmにして同様の曲げ加工をすればOKというわけです……。【画像右】
 
 ところが、事態はそんな楽観を許しませんでした。まず、銅板と言えども322mmもの長さになると、硬くて人力では一度に全体を曲げることができません。部分的に当て木をしながら少しずつ曲げていくわけですが、どうもこれが歪みを発生させてしまうようです。取り外してみると全体が微妙に湾曲。しかも、J字の直線部分と円弧部分の境目がキリッとしません。横方向の力によって丸棒がずれてしまうのが原因のようです。また、J字の円弧の最後がうまく丸棒に密着しません。やむなく小型の金槌でトントン。これが大失敗。まるで彫金細工のようにボコボコ。(涙)
 
 プレス加工の専門業者に外注するわけにもいかず、しばらく意気消沈。たまたま読んでいた、小関智弘『職人力』の「熟練技能は、問題解決能力」の言葉に励まされ、再挑戦を決意。「できるかできないか」ではなく、「どうしたらできるか」を考えるわけですよ。基本方針を堅持しつつ、不具合の原因を究明してその対応を考えました。
 
 

 実は、帯材の切り出しにも苦労しました。厚さ0.5mmの銅板はバイスに固定するにもジグが必要。それに、手持ちの糸のこはフトコロが浅いので322mmを切り出すことができません。小型の帯のこを使って四苦八苦。最後は10.5mm幅までヤスリ掛け。ただし、ヤスリを直角に当てると板が変形するので、板の方向にやさしく。ふ〜う。試作分も含めて3枚切り出しました。
 
 
 
 
 
 
 
 


 ジグ用のアルミLアングルほか。いずれもL=380mm程度。上4本のLアングルと丸棒は上述の試作ジグと同一。下から2本目は3.0mm厚の平板。これで一方のLアングルをかさ上げします。一番下は3.0mm厚、20mm×20mmのLアングル。これは曲げ加工の際に使用。
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 改良したジグ。丸棒の横ズレを防ぐために、下に平板を挟んで片方のLアングルをかさ上げしました。曲げる銅板を挟み込んでネジでしっかり固定。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 人力では手に負えないことが判明しましたので、バイスを使用。全体に均等に力が加わるように20mm×20mmのLアングルの内側の角で押さえ込みます。位置を移動しながら徐々に力の向きを変えていきます。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 第1段階の曲げ加工が終了。かさ上げしたアングルに干渉するので、最初はここまで。しかし、丸棒がずれることもなく直線部分と円弧部分の境目はキリリッ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 第2段階。かさ上げしたアングルを元の位置に戻し、第1段階と同じ方法でさらに曲げていきます。ここまで曲げると丸棒がずれることはありません。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 第3段階。最後に円弧の先端を丸棒に密着させます。一方のアングルを外し、これまでと同じ要領で力を加えてさらに曲げ加工。これでピッタリ密着。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 曲げ加工の終了。試作品のような湾曲もなく、一直線の仕上がりに大いに満足。どおだあと家族に自慢してみたものの反応はいまひとつ。ま、そうでしょうね。しかし、これで難関を突破したぞ!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 仕上げに両端の加工。内側にピッタリ合うような半円弧状の銅板片を作成。後からヤスリで削り取るつもりで長めに作っておきましょう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 雨樋を角材に取り付けてバイスに固定し、下端をハンダ付け。さすがに銅板はハンダがよく付きますね。おっと、シャツの袖口にハンダごての焼け焦げ。火傷にならなくてよかったと言い訳をしましたが、奥さまに叱られました。トホホ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 余分をヤスリで削り落として雨樋の完成。シャツの焼け焦げはさておき、まるでプレスのような仕上がりに自分でもことのほか満足。「できるかどうか」ではなく、「どうすればできるか」を考えた成果ですね。