三岐鉄道貨物鉄道博物館

 
 
 
 2009/10/18
 
 
 鉄道趣味は多岐に細分化され、それぞれ独自の世界が展開されています。はて、私の鉄道趣味は? もちろん鉄道模型、とりわけライブスチーム。これは言うまでもありません。しかし、ライブスチームの機関車を頻繁に運転しているわけでもなく、ましてや製作しているわけでもありません。目下3.5インチのホキ800を作っているというのが関の山。
 
 蒸気機関車の記録写真やビデオを見るのも大好き。しかし、視線は機関車の次位に連結された貨車に向いていることが少なくありません。コンテナ以前の、多種多様な長い貨物列車に心がときめきます。『国鉄貨車明細図集』を眺めているだけで至福の時を過ごすことができます。最近思うようになりました。ひょっとして私は貨車好きなのかも。
 
 記憶に残る年少の経験があります。親戚の家に遊びに行ったときのこと。たまたま児童向けのシリーズ図鑑の訪問販売が飛び込みでやって来ました。見せられた見本は鉄道の巻。蒸気機関車に牽引された貨物列車が何ページにも渡って描かれていました。母親に頼んで、その場で定期購読してもらうことになりました。当のその親戚の子は無関心で定期購読の契約はなし。
 
 その図鑑の貨物列車の絵を繰り返し眺めていたことを、最近、思い出しました。実物でも、電車にはあまり興味がありませんでした。それよりも貨物列車。次に続く貨車は何だろう、いったい何両続くのだろう、とワクワク、ドキドキしました。その頃のそういう記憶が今になって思い起こされます。ひょっとすると私は元々貨車好きだったのかも。
 
 そう思うようになって以来、密かに訪問の機会を狙っているところがありました。いま「鉄博」と言えば、とりわけメジャーの鉄道博物館。一度訪問しましたが、もちろん何度でも訪問したい施設です。しかし、私が密かに狙っていたのは、もう1つの「鉄博」、つまり貨物鉄道博物館。鉄道博物館とは比べ物にならないほどマイナーの「鉄博」。でも、貨車好きなら一度は訪問すべき聖地です。
  
 

1.近鉄富田駅

 
 名古屋駅から近鉄名古屋線で近鉄富田駅へ。ここで三岐鉄道に乗り換えます。貨物鉄道博物館は、この三岐鉄道の丹生川駅にあります。近鉄の線路を挟んで反対側に、三岐鉄道の駅舎。【画像左】まだ真新しく、ユニークな外観。自動販売機で丹生川駅までの切符を買おうとしたものの、どうやら近鉄専用の自動販売機しかない模様。あれれ、どうすればいいの……。駅員さんのいる窓口をのぞくと、そこが三岐鉄道の切符売場。切符の販売は昔ながらの手動。しかも硬券!【画像右】
 
 
    
 
 
 ホームに出ると、すでに西藤原行の電車が待機中。名古屋駅から乗ってきた近鉄の車両に比べると、かなりくたびれた感じ。大手私鉄の払い下げなのでしょうね。乗客もまばら。厳しい鉄道業界で経営は大丈夫なのかな。そういう心配がよぎります。がらがらとはいえ、車内で一眼レフカメラを抱えてウロウロしているおじさんは、怪しいですかね?
 
 発車後、すぐにそのカメラが活躍。次の大矢知駅で早速貨物列車に遭遇。重連の電気機関車にタキ1900の車列。おおっ。思わず声が出そうになる。電車の窓ガラス越しにシャッターを切る。当方の興奮とは裏腹に、電車は短時間の停車で駅を出発。ほんのわずかの貨物列車との遭遇。コンテナ以外の貨物列車は本当に久しぶり。今後の展開に期待感が高まります。カメラを抱えて興奮気味のおじさんは、やはり怪しい!?
 
 
 
近鉄富田駅ホーム
 
 
 
クモハ104
 
 
 
出発早々貨物列車に遭遇!
 
 

2.丹生川駅

 
 30分余りで丹生川駅に到着。降りたホームには、逆方向の電車を待つ中学生らしい女の子が2人。それ以外にひと気はありません。駅舎には、孫らしき子供と何か話しているおばあさん。この人が改札の人?テレビの音が大きい。切符の回収の際に「乗車記念」と言ってみたところすぐに反応があり、「無効」のスタンプ。外に出てみると、駅舎というよりも民家の一部という感じ。【画像左】
 
 ホームの先に線路に沿って目的地の貨物鉄道博物館が見える。「貨物鉄道博物館」というペイントがなければ、ただの倉庫(失礼!)。【画像右】開館日ではないので、ここも一切ひと気はありません。一応ダメモトで三岐鉄道社内の事務局に事前に連絡して、「開けていただけませんか」とお願いしてみましたが、やはりダメモトでした。あはは。本当の目的は屋外にある実物の貨車。別に悔いはありません。
 
 
    
 
 
 年代ものの貨車は、見ごたえがあります。美しく再生、整備されているものもあれば、さびて哀れな姿をさらしているものもあります。特に興味深いのは、いままさに再生中で車体の骨組みが丸見えのもの。【画像左】これまた年代ものらしいアーチバー台車の実物を目にすることもできます。【画像右】どうしても細部に目が行きますね。
 
 
    
 
 
 これらの貨車は、三岐鉄道の線路に沿って延びる専用レールの上に一列に並んでいます。現役らしい小型のディーゼル機関車もありますので、開館日や作業日などには貨車の移動の様子を見学することができるのかもしれません。1/1の模型と思えば、とても贅沢な鉄道趣味ですよね。
 
 
 
B4形式39
 
 
 
ワ1形式ワ5490
 
 
 
ト200形式ト246
 
 
 
ワフ21000形式ワフ21120
 
 
 
タム500形式タム2920
 
 
 
テラ1形式テラ146
 
 
 
シキ160形式シキ160
 
 
 
タム8000形式タム8000+ト1形式ト15
 
 
 
 
 

3.東藤原駅

 
 次に訪れたのは東藤原駅。貨物鉄道博物館保有の貨車は、丹生川駅にあるだけではありません。この東藤原駅にはホキ5700が1両。これを見ようと下車。しかし、予想に反して思わぬ成果がありました。まず、駅待合室が資料室。【画像左】これまで活躍した貨車の一覧やホッパの内部構造の説明なども。ほお〜。この東藤原駅こそ、太平洋セメントの工場のある場所だったのです。【画像右】
 
 
    
 
 
 「保存貨車の展示はどこですか」。改札で尋ねたところ、「……、それのことですか」。駅舎の目の前にありました。ホキ5700。蒸気機関車の静態保存と同じように、貨車が特設の展示スペースに置かれているとはね。貨車に対する思い入れの強さを感じます。実は、私の関心は、ホキそのものよりも、むしろ台車のTR41C。【画像下】これを模型化するための情報収集がねらいでした。
 
 
 
 
 台車の外観だけでなく、その内側にも潜り込んで写真撮影。二重になった板バネのうち、内側の板バネの先端はどのようにつながっているのか。これが懸案でした。何を言っているのか分かりませんよね。(笑)TR41Cをなめるように眺め回して一応納得。さて、次の電車で終点の西藤原駅まで移動しようと思ったところで、何やら駅構内に動きが……。貨車の入換作業が始まった模様。ヒイ〜ッ。予想もしない事態。
 
 あわてて駅ホームに戻り、入換作業の見学。至福のときが流れます。ライブスチームで周回レイアウトを走るのも結構ですが、ポイントのたくさんあるヤードで、ライブスチームに乗って貨車の入換作業や貨物列車の編成作業をする、というのも楽しそうです。ライブスチームの操車場。T氏からこのアイデアを伺ったときは、目からうろこの感がありました。周回しないのでスペースの確保も容易ですよね。
 
 1/1の貨車の入換作業を見ているうちに、いつしかライブスチームの夢の世界に入り込んでいました。(笑)時間の都合もあり、貨車の形式も十分確認できないまま、終点の西藤原駅に移動。やっと理解できました。貨車の入換や貨物列車の運行も含めて「貨物鉄道博物館」なのですね。なるほど。東藤原駅を是非また訪問したい!
 
 
 
ホキ5700形式ホキ25767
 
 
 
東藤原駅構内
 
 
 
入換作業開始!
 
 
 
入換作業が続く
 
 
 
 
 

4.西藤原駅

 
 三岐鉄道の終点、西藤原駅に到着。【画像左】駅舎はこんな具合。【画像右】西藤原駅にも保存機関車が置かれています。蒸気機関車とディーゼル機関車と電気機関車1両ずつホームに並んでいます。しかし、ここの目玉は別にあります。ライブスチームのレイアウト。多くの子供連れが来場していて、さながらライブスチームの公園です。家族でお弁当を広げている方たちも少なくありません。
 
 
    
 
 
 こういうところでの私の関心は、ライブスチームそのものよりも、むしろこのような運転会の管理や運営。場内を見回してみると、ターンテーブルの奥に機関庫のような施設があります。失礼も省みず、作業中の方に声を掛けてお話をうかがわせていただきました。三岐鉄道が土地を提供しているが、それ以外のことはすべてボランティア。金銭的な支援はありませんとのこと。えっ、土地が提供されているのですかあ。それだけでも羨ましい限りですよ。
 
 一応クラブのような形にはなっているものの、運客に協力していただけるならご自由に参加してくださいとも。「下関は遠いですけど、是非機関車を持参して走ってください」。ありがたいお誘いに感謝します。でも、3.5インチですとは最後まで申し上げられませんでした。(^^; こんなレイアウトが身近にあったらどんなにいいだろう。そう思いながら西藤原駅をあとにしたのでした。
 
 追記 丹生川駅や東藤原駅の保存貨車の見学、それに西藤原駅でライブスチームのお話。とても有意義な楽しい1日を過ごさせていただきました。電車賃以外はすべて無料でしたが、貨物鉄道博物館の運営のために、帰宅後、本当にわずかながら寄付をお送りさせていただきました。貨物鉄道博物館のホームページに寄付のお願いと寄付者の一覧が掲載されています。(私も載っています!)
 
 
 
ここにも保存機関車
 
 
 
常設レイアウト
 

 

機関庫
 
 
 
保存機の前で