ファイヤーピット/シーズニング/クッキング BACK
 

シーズニング
 
 新たに購入したダッチオーヴンは、そのままでは料理に使えません。鋳鉄製ですから当然出荷時に防錆処理がしてあります。まず防錆ワックスを取り除くことが必要です。これはお湯で洗えば簡単に落ちますし、水を入れて沸騰させると、あくのようなものが出てきます。もう1つ大切なのがシーズニング。鋳鉄の表面に油を馴染ませるいわゆる「慣らし」。でも、いったいどうやってシーズニングをしたらいいのでしょう。とりあえず参考資料を収集して目を通してみることにしました。シーズニングの文献学的研究。
 
 本体添付の取扱説明書(英文)
 
(1)上質のオリーブオイル等(お薦めはCrisco、動物性脂肪はダメ)をペーパータオルを使って全体に、内側も外側も、蓋にも足にも塗る。
(2)上下を逆さまにして、キッチンのレンジオーヴンに入れる。
(3)350゚F(180゚C程度)にセットして、少なくとも1時間熱する。
(4)火を消し、ドアを閉めたまま、室温に下がるまでそのままにしておく。
(5)オーブンから出してシーズニング終了。
 
  製造元のLODGE社の取扱説明書ですから、この通りにするのが一番確実でしょう。でも残念ながら、我が家には12 inchのダッチオーヴンが入るような大きなレンジオーヴンはありません。というか、そもそも台所にはレンジオーヴンなんて洒落た設備はないんです。
 
 
 
 
 
 

 本体添付の総輸入元(三井物産)による取扱説明書
 
(1)ネギ、ショウガといった香りの強い野菜で、野菜炒めを作る。
(2)無塩、弱臭、熱に強い油(無塩バター、ピュアオリーブ油、高純度ゴマ油)を使い、丁寧に炒める。
(3)野菜炒めを捨て、タオルで油を拭き取る。
(4)もう一度繰り返して、本体のシーズニング終了。
(5)蓋は、薄く油を塗り、ガスコンロで温める。100〜200゚Cで5分間。
(6)タオルで油を拭き取る。
(7)もう一度繰り返して、蓋のシーズニング終了。
 
 輸入元の取扱説明書ですが、オリジナルの翻訳ではありません。内容はまったく別物です。蓋に関する温度設定と時間もまるで違います。せっかく作った野菜炒めを食べられないなんて……。
 
 
 

 菊池仁志『日曜日の遊び方ダッチ・オーヴン』雄鶏社、1996年10月
 
 3通りの方法が紹介されています。
 
1.一般的な方法
 輸入元の取扱説明書と同様、野菜炒めを作る。大筋で類似しているが、詳細でしかも説明が丁寧。野菜炒めは2〜3回。最後は、新しい油をうすく塗って、野菜なしで熱し、自然にさます。蓋の加熱温度は150〜200゚C。
 
2.野外で行う方法
(1)防錆用ワックスの除去も兼ねて、たき火で200゚Cに熱する。
(2)ワックスの焼ける煙が出なくなったら火からはずし、布で拭く。
(3)油を全体にうすく塗り、再びたき火で熱し、油の焼ける煙が立ち始めたら、火からはずす。冷めてから再度油を塗り、火にかける。
(4)これを10回程度繰り返して、シーズニング終了。
 
 これはかなり乱暴な方法なので、著者もあまりすすめていない。やけどの危険性も高く、ダッチオーヴンがゆがんだり、ひび割れたりすることもある。
 
3.アメリカで行われる方法
 上述の英文の取扱説明書に近い内容。レンジオーヴン150〜200゚Cで30〜45分間。これを5〜6回繰り返す。
 
 
 

 菊池仁志『ダッチ・オーヴン生活』日刊スポーツ社、2000年2月
 
 前文献と同じ著者によるシーズニングの紹介。やはり3通りの方法。
 
1.わかりやすいシーズニング
(1)野菜炒めを作るが、1回目は白菜、人参の皮など匂いの少ない野菜くずで、温度を高くせず、軽くサッ、サッと炒める。終わったら野菜を捨てる。油は高品質のオリーブ油に代表される植物油。
(2)再び野菜炒めを作る。2回目はショウガ、ネギといった香りの強い野菜を炒める。火加減は180゚Cをめどに徐々に強火にしていく。長時間十分に炒め、終わったら野菜を捨てる。
(3)お湯でよく洗って、タオルで水気を拭き取り、ゆっくり自然に冷ます。
(4)内外両側に植物油を極薄く塗って、シーズニング終了。
 
2.アメリカ式シーズニング
 上述の英文の取扱説明書と同じ内容。
 
3.僕のシーズニング法
(1)本体と蓋の隅々に、極薄く油を塗る。油は、他の方法と同様、無塩の植物油。
(2)終始強火でガンガン焼く。
(3)浮いてきた油を丁寧に拭き取る。
(4)油気がなくなったら、補うように極薄く油を塗る。モウモウと煙が出るが頓着しない。
(5)焼いては油を塗る、という作業を繰り返す。
(6)じきに黒くなってきてシーズニング終了。蓋も同じ要領。
 
  前著の野外で行う方法に類似した方法。やけどの危険性が高く、トングや箸を使い、注意して油を塗る必要がある。
 
 
 

 『ダッチオーブンクックブック』辰巳出版、2000年6月
 
(1)新品を火にかけ、防錆ワックスを焼き切る。
(2)お湯を注ぎ、植物性のたわしで洗って、乾燥させる。
(3)ペーパータオルで全体に油を塗り込める。内側も外側も、縁も底も足も。オリーブ油がいちばんいい。
(4)最後に火にかけて、油を焼き切り、シーズニング終了。
(5)蓋も同様にする。

 野菜炒めは作らない。むしろ英文の取扱説明書の内容に近いかな。加熱することより油を塗ることが強調されている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 『ダッチオーブンクックブック【完全レシピ56】』辰巳出版、2001年6月
 
 上記クックブックの第2弾。シーズニングについての記述はなく、もっぱらレシピ集。冒頭、「1つ持つなら12インチ、キャンプタイプ」との前著の主張が撤回され、「毎日使うなら10インチ、キッチンタイプ」とのこと。んん?主張にこだわりはないのかしらん。コンボクッカー(片手なべ)、スキレット(フライパン)を使ったレシピも豊富。ダッチオーヴンの世界がさらに広がる。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 さて、以上の文献学的研究を念頭に置きつつ、実際にどうやってシーズニングをしましょうか。レンジオーヴンのない我が家では、少なくともアメリカ式は採用できない。また、野外でたき火を使う方法や、ガンガン焼く方法も、やけどの危険性等を考えると尻込みしてしまう。ズブの素人が、初めてダッチオーヴンを取り扱うわけですから、まあ無難にこなせそうな方法でいいんじゃないの。加熱の温度や時間、繰り返しの回数にも一定のものがあるわけでもなさそうだし……。まあ、だいたいの感じで……。
 
 本体は、野菜炒め方式。ネギ、ショウガを使って野菜炒めを2回作りました。もったいないけど炒めた野菜は捨てました。う〜ん、こんなんでいいのかなあ、と思いつつ、お湯で洗って、乾燥し、油を全体に丁寧に塗りました。
 お湯を沸騰させると、あくのようなものが出てくる、という情報もあったので、後日やってみましたが、わずかに出ただけでした。
 
 
 
 
 
 
 
 

 蓋は、そのままガスレンジで加熱。煙が出たところで、火から外し、やや冷めたところで再び油を塗って加熱。レンジの五徳を2段重ねにして、遠火になるようにしましたが、炎のあたる箇所だけが焼けてしまいます。こちらも、う〜ん、こんなんでいいのかなあ、と思いつつ、お湯で洗って、乾燥し、全体に油。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 油は、オリーブオイル。とりあえず、キッチンにあったものを借用しました。今度からは、ダッチオーヴン専用を用意しますね。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 シーズニングとしてこれでいいのかどうか、よく分からないままですが、要するに、使い込んで油を十分になじませることが大切なのでしょうから、ブラックポットに成長できるかどうかは、むしろ今後の使い方次第。さあ、ダッチオーブンの料理に挑戦だあ。
JDOS(Japan Dutch Oven Society)のホームページ