〔線路の踏み固め〕


 「がんばれ!かべせん」は、いまはない可部線非電化区間の廃止の議論の中で「可部線対策協議会」が発行していた可部線コミュニティ情報誌。1997年7月No.9の上掲表紙は三段峡駅のC11328。「1969.7.27」は加計〜三段峡間の開業日。可部線の非電化区間で蒸気機関車に乗務していた元広島機関区の機関士さんの投稿が掲載されている。

 「この年の3月10日に私が運転するC11328号で路線の踏み固めと言って、初めて列車として加計駅から三段峡駅まで運転いたしました。その時、三段峡駅に到着した時の写真がありますので同封します」「開業は4月の予定でしたが、この年は大雪のため、雪解けと共に「なだれ」が数箇所、発生し運転不能となり、復旧のため開通は7月に延期されたと聞いております」。三段峡駅までの踏み固めはC11328だったことがわかる。

   

 さて、我が庭園鉄道も新線開通にともなって「踏み固め」をしよう。設計上最小通過半径5mのスケールモデルが半径5mのカーブに進入すると、車輪のフランジがいっぱいいっぱいになってしまうだろう。状況によっては「せり上がり」が起きて脱線するのではないか。先輪は半径5mでこんなに振れている【左画像】。直線線路と比べると振れ具合がよくわかる【画像右】。

 これまで参加した運転会のレイアウトの曲線線路はほとんどが半径5m以上。一度だけ半径5mの円形仮設線路に乗り入れたが、先輪が脱輪するので運転を諦めたことがある。それで心配になっている。1/12スケールの半径5mは、現物では計算上半径60m。どう考えても急カーブだ。二軸車やボギー車ならいいが、1C2の機関車はどうなるのだろう?

 最初は無火の無動力でテスト。手押しでバック走行して曲線線路に進入。直線線路より押しの力が必要。カーブの抵抗が大きそう。
 
 あと少しのところでトラブル発生、曲線線路と最後の直線線路の継目で従台車が脱輪。何度繰り返しても脱輪する。
 
 継目箇所をよく見るとレールに段差があり、左右もズレている。外周側のレールの継目がこれだと、フランジがせり上がるのだろうな。
 
 レールの段差はヤスリがけ。左右のズレは白丸部分の継目板がじゃましていることが判明。継目板のここもヤスリで削りました。継目が危ないとわかったので、ほかの箇所もチェック。ほらね、やっぱり「踏み固め」のテスト走行をしてよかった。せり上がりには注油するといいと聞いている。
 
 次に前進で進入。やはり曲線線路の抵抗が大きい。あれ、まだターンテーブルがないのにどうしたのでしょうね?
 
 こちらはもうトラブルなし。よかった。それなら……
 
 スチームアップして走らせましょう。火を入れるのは2021年4月以来。庭園鉄道ではもちろん初めて。運転室の屋根がないのは水面計の続きだからです。あれ、ボイラーに注水する漏斗のフィルターにオイルが染み込んで使えない。キッチンペーパーで代用。
 
 灯油に浸した着火用の割箸がない。急いで準備。さらに着火するチャッカマンがガス欠。電化キッチンでは火が着かない。家中探し回ってマッチを見つけた。ブロアも電池切れで力が弱い。単一乾電池の買い置きはない。これも探し回って使用中の乾電池を拝借。やれやれ。
 
 しばらくすると蒸気がいい感じ。ただし、塀に囲まれた閉鎖空間なのでブロアの煙が停滞し、風がないと周囲がモヤモヤ。視界が悪くなるくらい。広いレイアウトでは思いもよらない事態。
 
 そろそろ安全弁かなと期待していたら、思いもよらないところか吹き出した。水面計の上栓。まさにメンテナンスしたばかりのところ。パッキン押えの漏れにばかり気が向いて上栓の確認が不十分だった。増し締めして解決。
 
 あれこれあって、やっと安全弁が吹き始めた。今回はあくまで「踏み固め」のテスト走行。石炭の追加はしない。
 
 久しぶりの機関車走行。塀があると、ドレンやドラフトの音が響いていい感じだ。数回往復して蒸気圧がなくなったところで無事終了。気付きが1つ。走行距離が短いので軸動ポンプからのボイラー注水が十分でない感じ。本運用ではドンキーポンプとハンドポンプをしっかり活用したい。