キャンピング・トレーラー20年間の5つの教え
―キャンピング・トレーラー次世代のみなさまに―
第1の教え 装備はできるだけシンプルに
いまどきトイレのないキャンプ場はありません。高速道のサービスエリア、道の駅など、インフラ整備には隔世の感があります。20年間、トレーラーにトイレがなくて困ったことは一度もありません。汚物タンクの処理は、誰がするにしても億劫です。シャワーも同様。温泉に入りましょう。「あった方がいい」装備は、なくても大丈夫です。
イギリス国営放送BBCの「トップギア」を見ると、ヨーロッパでキャンピング・トレーラーが嫌われ者であることがわかります。貧しい労働者がこれを牽引してバカンスに出かけ、低速走行で渋滞を引き起こすからです。お金持ちはキャンピング・トレーラーを牽引しません。そんなことをしなくても、現地に別荘がありますからね。
日本ではそんなイメージはないでしょう。貧富の格差の点は別にして、そもそもトレーラーに過剰な装備は似合いません。車重が増えて牽引車の燃費が悪くなるだけです。最初のうち、あれこれあったらいいなと思いましたが、クーラーもテレビも、結局不要だということを悟りました。冷蔵庫やシンク、コンロは便利で役に立ちますが、キャンプ道具でも代替可能です。ただし、FFヒーターは必須です。
第2の教え 保管場所は傾斜の舗装
2〜3年、もしくは10年程度で手放してしまわない場合、つまり、10年以上の長期間トレーラーを維持したい場合には、雨水対策が重要です。床下の湿気が致命的だからです。屋根付きの保管場所がある場合を除いて、地面は舗装、しかもフラットではなくて、やや傾斜した場所がいいです。つまり、水はけがよくて湿気のないところ。
ガスボンベがあって通風孔のあるフロント収納の床板は10年で穴が開きました。しかし、本体部分の床が20年間大丈夫だったのは、地面がやや傾斜したアスファルト舗装だったからだと思っています。
言うまでもなく、10〜20年のスパンでは日光もダメです。日焼け、劣化が進みます。日光のあたる南向き車体側面と、そうでない逆の車体側面では、20年間の劣化の差が歴然です。塗装もさることながら、アクリル二重窓の劣化は象徴的。トレーラーを遮蔽倉庫にでも保管しない限り、日光の影響はしょうがないです。メンテナンスと修理に励みましょう。
第3の教え 前進は楽しいが、後退は難しい
牽引運転では、狭い曲がり角のライン取りや、牽引車とトレーラーを一直線に停車させることなど、前進にも、それなりのハンドルテクニックがあります。内掛けはできません。これらのテクニックが身につくと牽引運転が面白くなります。
しかし、後退は難しいです。まっすぐにちょっとだけならまだしも、狭い場所や、曲がりながらの後退には、高度なテクニックが必要。20年を経てもバック運転には自信がありませんでした。最良の対応策は、そういう事態に陥らないように事前によく考えておくことです。
ただし、それでも困ったときは、切り離してトレーラーだけ人力で動かす、という奥の手があります。この奥の手を想定しておくだけで気持ちが楽です。大型トレーラーの運転手さんは、実は高度な職人さんなのです!
第4の教え 維持費は安くても、牽引すると安くない
車検や各種の税金をはじめとする維持費は、普通の車に比べると格安です。何しろエンジンがないので、整備が単純。しかし、牽引するとお金がかかります。高速道路は車軸が増えてランクアップ。普通車なら中型車に、中型車なら大型車の料金になります。
牽引してフェリーに乗船するときは、全長で料金が決まります。大型トラック並みです。もちろん牽引すると車の燃費は悪くなります。荷物などを載せて車重が増すと、その分燃費も悪くなります。鉄道で移動して宿に泊まる方が安上がり、ということも十分にあります。したがって、牽引時のお金のことは考えない方がいいです。必要なものは払いましょう。
第5の教え キャンピング・トレーラーは手段。その目的は?
トレーラーでキャンプすること自体は数年で飽きます。納車の夜はうれしくて駐車場で寝たりしますが、トレーラーに泊まること自体は、そのうち慣れて、新鮮さや感動はなくなります。そうなると、予想以上に手間のかかるトレーラーはもう卒業、ということになるかもしれません。
しかし、トレーラーの本領はここからです。テントと違って、キャンプ場での長期滞在がちっとも苦になりません。トレーラーに泊まって何をするか。この問いです。トレーラーはあくまでも道具。この道具を使って家族とどのような時間を共有するのか。問いの本質はここにあります。
トレーラーだけがそのための手段ではありませんが、トレーラーならではの、他の何にも代えがたい時間の共有の仕方があります。「第4の教え」はそのための教えです。キャンピング・トレーラーは家族のために。
以上
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