〔信号炎管被の取付〕
 
 
 そもそも当初は、この筒状のものがいったい何なのかすら知りませんでした。ディテール加工の手掛かりにしてきた『国鉄貨車明細図T』(鉄道史資料保存会、1993年)の車掌車の図面には記載がありません。くじゅうエイドステーションのワフに装備されていましたが、円筒の中から何かが引き出された状態になっていました。【画像左】また、室内では、左右両壁のこの部分にひもが結び付けられ、中央で同時にそれを引くようになっていました。【画像右】たまたま動輪舎のパーツリストの中に「信号炎管被」を見つけて、はあなるほど、と思った次第です。
 
 
    
 
 
 調べたところ、「車両用信号炎管」は、昭和37年の三河島事故を契機に旧国鉄の安全対策として開発されました。運転室の屋上に固定された点火装置の中に装填されていて、運転士が非常事態を発見したときに室内のひもを引いて点火し、対向列車に緊急停止信号を送るのだそうです。もちろん現在でも電車や機関車の運転室の屋上に確認できます。これが貨物列車最後尾の車掌車にも装備されていたわけです。後付の安全装置ですから、図面には載っていません。くじゅうエイドステーションのワフも、本来はここに信号炎管が装着されていたのでしょうね。
 
 信号炎管の被であることは判明しましたが、しかし、どうやって工作しましょうか。円筒部分は逆U字型ですが、先端は半球状。柔らかい銅版といえども、平板から一体もので成形するのはまず無理。円筒部分と半球部分に2分割して組み合わせましょうか。円筒部分は問題ありません。でも半球部分は? 真鍮の球も入手可能ですが、釣用の鉛のおもりはどうでしょう。いずれにしても加工が大変で手に負えそうにありません。う〜む。
 
 自作加工をあきらめ、既存のありもので間に合わせることに方針転換。先端が球形で丸くなった金属製品は……。「何かないかなあ」。奥さまに相談したところ、即座に「ウィスキーのマドラー」。さすがにお酒好きは着眼が違いますね。(笑)料理道具からケーキ作りの道具なども探し回って、結局成果なし。娘の勉強机に座って考え続けていたところ、目の前に鉛筆。プラスチックのキャップ付き。ほう、このキャップはどうだろう。ま、材質は何でも構わないことにしましょう。形状が再現できなければ工作は前に進みませんからね。発想は柔軟に。
 
 
 
 
 早速ノギス持参で文房具店に。各種のメーカー品を見比べながら、最後に残ったのがこれ。SAKURAのボールペン、スフレシリーズ。グレーを選択しましたが、色はどうでもいいです。ポイントはキャップ先端の形状と外径。先端がほぼ期待通りの球状に近い。半分にカットすればおそらくそれらしくなるでしょう。ただし、プラスチックなので塗装の際には要注意ですね。
 
 

 キャップを拡大するとこんな感じ。デジタルノギスで計測すると、厳密にはやや気持ち先細りです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 ボールペンを2本購入。U字型にこそなりませんが、縦方向は中心を外して大きめにカット。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 側板に取り付ける基盤は、0.5mmの真鍮板から作成。切り出す前に取付用の下穴も。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 薄板のヤスリがけには気を使います。直角方向に安易に削ると変形します。LとRの刻印も優しく慎重に。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 後付の安全装置だからでしょうか。調べた限り、取付位置は車両ごとにまちまちです。車掌室の中央部分に付いている車両もあります。ここでは、一応あんみつ坊主さんご提供のワフ29513を念頭に位置決めをしました。いつもの通り、青ニスとバスコークで所定の位置に接着。
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 取付穴を側板に写し開けて、M1.2mmタップ。この5箇所のネジ頭の突起も、信号炎管被をそれらしく見せる特徴です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 ボールペンのキャップから切り出した被の部分をバスコークで基盤に接着。これで信号炎管被の出来上がり。色は別として、それらしく見えませんか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 右側の信号炎管被のアップ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 これは左側。先端の丸みと5つの取付具の突起がポイントです。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
これでディテール加工は終了