【事態の詳細と車両の損傷】
ホテルの中から人が出てきて、「どうした、どうした」と騒ぎになり始めました。振り返ったまま茫然と立ち尽くしていたものの、我に返ってプジョーのところに戻ると、車の中から「足が抜けない、痛い」という声。支柱が折れ、重厚な木製の門扉がユラユラ。車をバックさせようとすると、いまにも倒れ掛かりそう。数人の男の人たちが門扉を手で支え、やっと引き離すことができました。
どうしてこんなことになってしまったのでしょう。運転していた方からは「足がはさまった」との言葉がありました。アクセルペダルが内側に寄っているのでそれが原因かとも思いましたが、どうやら、どちらかの足が何かの拍子にブレーキペダルの下に入り込み、それがじゃまをしてブレーキが踏み込めなかったのかもしれません。運転席の足元を転がるボールなどが原因になる話を聞いたことがあります。
一段落ついて、ホテルの営業課長さんと善後策を相談。さすがに恐縮され、また運転の当事者も平身低頭。しかし、当方は意外に平静。なにせ、もう3回目ですからね。1回目が高速道路の脚立、2回目がコンビニのオカマ、そして今回の門扉とがっぷり四つ。あ~らら、またかよ、という程度。車を修理して、原状回復していただければそれで結構です。それ以上何も申し上げることはありません。
しかし、どうやって帰宅するかが問題です。提示された選択肢は2つ。(1)エンジンルーム内の損傷はなく、走行への影響もなさそうなので、このまま帰宅して自宅最寄りのブルーライオンで修理し、代車を手配。(2)現地最寄りのブルーライオンに持ち込み、代車のレンタカーで帰宅し、修理後自宅へ回送。現地と自宅最寄りのブルーライオンが連携し自宅回送は問題ないとのこと。そういうことならと後者を選択。
課長さんの先導で、私がプジョーを運転して現地最寄りのブルーライオンへ。駐車場で損傷の位置や程度を確認。現場で一目見た感じでは、ボンネットの変形だけが目に付いていましたが、改めてよく見ると、左フェンダーもかなり変形している模様。ヘッドライトもゆがんでしまっています。光軸もズレているはずです。この状態で高速のトンネルはマズイよね。レンタカー帰宅を選択して正解。
プジョーを残し、課長さんの車でレンタカー店へ移動。これから使用することになる奥さまの要望で車の大きさを指定。出てきたのはHONDAのFit。まあ、何でもいいです。その後も高速道の入口まで先導していただきました。誠意を感じます。「しばらく時間がかかるでしょう」とブルーライオンの担当者。再びプジョーのない生活が始まることになりました。その夜、課長さんから自宅に電話。「きょうは本当に申し訳ありませんでした」。はい、お気持ちは十分通じていますよ。
それにしても、我が家のプジョーは災難続きです。脚立の一件で右フロント。オカマで左リヤ。そして今回左フロント。そうすると、次は右リヤってことですか。それで一巡なんて、縁起でもありません。事故に遭わないように気を付けているのに、今回のように他人に預けたケースでは、なすすべがありません。お手上げですよね。メカニカルなトラブルがほとんどないにもかかわらず、不運な損傷が続きます。満身創痍だぜ、我が家のプジョーは!
【レンタカーから代車へ】
10日ほど経過したところで、最寄りブルーライオン(実は山口トヨペット)から連絡が入った。「代車がご用意できました」。トラブルの当日、現地ブルーライオンの代車が出払っていたので、レンタカーを手配していただいていた。当方としては、そのHONDAのFitにようやく慣れてきたところなので、気が進まなかったものの、まあ、おっしゃる通りにいたしましょう。今度はいったいどんな車?
早速お店にうかがいました。お話によると、プジョーの修理は保険で対応。でも、レンタカーは対象外。ほお、ということは持ち出しですね。1日5,000円以上はするでしょうから、10日でウン万円。このまま借り続けると大変な額になっちゃいます。先方も悲鳴を上げていらっしゃるとか。ま、そういう事情ですか。で、代車ってどれ?
「これです」と案内されたのは、真新しいTOYOTAのPorte。色は白。電動スライドドアは物珍しいものの、エアロパーツ装着の扁平タイヤ仕様。およよ。「他にないのですかあ」「バンタイプならありますが……」。うぐっ。どうやらお店としては最高のおもてなし、ということのようです。常時使用するラテン系の奥さまの当惑した表情が思い浮かびます。プジョーの代わりにしてはあまりの様変わり。
乗り換えて帰宅すると、予想は的中。「何これ、ヤンキーの車じゃないの!」。その通りです。でも、バンよりはましでしょう。コラムシフト、足踏みサイドブレーキなどに慣れるため、ふくれっ面の奥さまをなだめつつ試運転へ。どんな状況でも平常心で運転しないと危ないですよ。とは言ったものの、ラテン系には不似合いな車。1日も早くプジョーが戻って来てくれないかなあ、という思いは奥さまといっしょ。
【修理の概要】
修理が完了してプジョーを引き取ることができたのは、結局2週間余り後。トラブルのあった現地ブルーライオンの修理工場から、カーキャリーのトラックで運搬されてきたらしい。アサイチでお店に伺うと、洗車したばかりなのか、一部に水滴の残った我が家のプジョーが店舗の前に。やあ、会いたかったぜ。長かったなあ。よく見ると、以前より美しくなった感じ。塗装したばかりなのでしょうね。
お店の方から修理の概要の説明。事前に、修理の詳細が分かる資料を、とお願いしておいたところ、「概算見積書」のコピーを渡されました。保険屋さんとの交渉で、板金修理よりパーツ交換を要請したとのこと。分かりやすいところでは、ボンネット、左フロントフェンダー、バンパーなど。これらはすべて取替。我が家のプジョーは、トラブルごとに部分的に新車に生まれ変わるのだ。あは。概略の説明を受け、別件でお願いしておいたエンジンオイル交換の支払いを済ませて帰宅。久しぶりのこのドライブフィーリングは、やっぱりプジョーだぜ。ルンルン。
【修理の詳細】
帰宅後、「修理見積書」と見比べながら子細に点検。なるほど、ボンネットは新品。内側の汚れが一切ない。目を下に向けると、バンパー、チンスポイラーなども新品らしい。擦り傷のないパーツに代わっている。意外だったのは、ヘッドライト。損傷した左だけでなく、右も交換。衝撃で左右とも取付部分にひびが入っていたのだとか。レンズガラスのシーリングが真新しい。そこまでしなくても、という思いもないわけではありませんが、お気遣いに気持ちが伝わります。
修理の明細は以下の通り。バンパー、ラジエータグリル、ボンネット、フェンダなどのパーツ交換が高額。左右のヘッドライトも。エンジン本体や車の構造自体への影響はなかったものの、この見積書によると、左フロントカントレール(どこ?)の修理に工賃がかさんでいる。エアコンガスや冷却水、それにファンモーターも取替。で、部品総額260,600円、工賃総額154,600円。消費税も合わせて修理総額435,980円也。自分で支払うと、気絶しそうな額ですね。
修理項目・部品名称
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修理方法
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部品価格
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工賃
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Fライセンスプレート |
脱着 |
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リベット |
取替 |
400
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Fバンパカバー(未塗装) |
取替 |
48,900
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6,800
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ラバーブーツ |
取替 |
6,900
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スクリュ |
取替 |
300
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Fバンパブラケット |
取替 |
6,800
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Fスポイラ |
脱着 |
|
|
ラジエータグリル(未塗装) |
取替 |
13,200
|
1,900
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クリップ |
取替 |
400
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タジエータグリルアッパ |
取替 |
4,500
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グリルクリップ |
取替 |
400
|
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コーションプレート(ファン) |
取替 |
500
|
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左ヘッドランプ |
取替 |
21,000
|
3,100
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右ヘッドランプ |
取替 |
21,000
|
0
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ボンネット |
取替 |
49,000
|
1,900
|
左Fフェンダ |
取替 |
20,900
|
3,100
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左Fフェンダサポート |
修理 |
|
600
|
右Fフェンダパーツ |
脱着 |
|
600
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右サイドターンランプレンズ |
脱着 |
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左Fハーフフレーム |
取替 |
10,800
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7,400
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左Fハーフフレーム残部 |
修理 |
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4,300
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左フェンダインナーフレーム |
修理 |
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左ホイールハウジングF |
修理 |
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クロスメンバー |
修理 |
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左Fカントレール |
修理 |
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12,400
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右Fカントレール |
修理 |
|
4,300
|
左Fドアパネル |
修理 |
|
|
左Fドアパネルパーツ |
脱着 |
|
3,700
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左FドアガラスアウタW/S |
取替 |
1,900
|
|
左Fドアアウトサイドモール |
脱着 |
|
|
モールクリップ |
取替 |
700
|
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左Fアウタリヤビューミラー |
脱着 |
|
600
|
左Fドアアウトサイドハンドル |
脱着 |
|
1,200
|
左ハンドルリベット |
取替 |
200
|
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フレームフェイス |
取替 |
18,900
|
13,000
|
エアコンガス(HFC134a) |
取替 |
1,500
|
|
冷却液 |
取替 |
2,600
|
0
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ドライブファンモータ |
取替 |
24,700
|
|
ファン |
取替 |
5,100
|
|
塗装費用 |
|
|
88,400
|
配線・配管費用 |
|
|
1,300
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小 計 |
|
260,600
|
154,600
|
課税額計 |
|
415,200
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消費税 |
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20,760
|
合 計 |
|
435,960
|
別件ながら、もう少し。例のバッテリーを点検していただいたところ、液量は問題なし。オーバーフローしたわけではなく、気体のガスが吹き出ただけかもしれないとのこと。バッテリーケースのこの箇所は、通常プラスチックなどの耐腐食素材で作られているのに、プジョーの場合は金属製。腐食するのは当然、とのこと。たしかに腐食して赤サビが出ています。当面の機能に問題はないにせよ、改善の余地がありはしませんか。プジョージャポン!
「あす、あさっては1007のキャンペーンですね。新聞に折込が入っていましたよ」「はあ、そうなんですか。新聞見ていないので……」。およよ。受け取りの際に、隣接のブルーライオンサテライトをのぞいたところ、営業担当のこの対応。プジョーディーラーは、山口トヨペットの子会社。社員の方は本社からの出向なのでしょうか。営業意欲や営業スキルに疑念を抱かざるを得ませんね。ブルーライオンネットワーク全体の質が問われることになりますよ。
【示談書】
示 談 書
当事者 甲 |
住所 □□□□□□□□□□□□ |
氏名 □□□ホテル 営業課長□□□□ |
当事者 乙 |
住所 山口県下関市□□□ |
氏名 西 田 雅 弘 |
当事者 丙
1.甲の使用者
2.乙の親権者 |
住所 |
氏名 |
事故年月日 |
平成18年3月22日午前10時30分頃 |
事故発生場所 |
□□□ホテル正門 |
示談条件
甲は乙所有の車両 山口530ち206(プジョー206) を移動中に損傷させた件に付、乙車両の修理代(¥430,000)を負担し、全額(修理工場に)支払うものとする。 |
当事者協議の結果、上記の通り示談が成立しましたので、今後本件に関しては双方共裁判上又は裁判外において一切異議・請求の申し立てをしないことを誓約します。
平成18年4月10日
当事者 甲 氏名 □□□ホテル 営業課長□□□□ |
印 |
当事者 乙 氏名 西 田 雅 弘 |
印 |
当事者 丙 氏名 |
印 |
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「この度は、ご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした。心よりお詫び申し上げます。お電話でもお願い致しましたが、示談書の当事者乙の欄にご記入・捺印(3枚とも)頂き、上2枚をご返送下さいますようお願い申し上げます。ご面倒をお掛けしますが、よろしくお願い申し上げます」。はいはい、了解しました。署名、捺印して早速返送。金額が大きいので、保険屋さんから示談書が求められている、と電話で説明をいただいていました。
示談書だけを返送するのもいささか事務的。丁寧にお詫びのことばもいただいているので、短い手紙を添えました。「前略 ご依頼の示談書を返送いたします。トラブルの発生自体は残念なことですが、その後のご対応は、細かなお心遣いやご配慮など、さすがに高く評価できるものと思いました。当方としては、今後万一、逆の立場に立たされるようなことがありました場合には、是非見習わせていただきたいと存じます。…… 貴ホテルの今後ますますのご発展をお祈りいたします。草々」
数日後、ホテルから絵葉書。「例年に比べ長く咲き楽しませてくれた桜も、この雨ですっかり葉桜となりましたが、これから春本番となっていくのでしょうか。さて、早速に示談書をご返送頂きありがとうございました。また、終始一貫、暖かいお気持ちで接して頂き、本当に感謝の念に堪えません。重ねて御礼申し上げます。…… ご機会がございましたら、是非またご利用賜れば幸いです。ありがとうございました」。一件落着ですね。