やずミニSL博物館・若桜鉄道訪問記
2017/07/15-07/17
1.やずミニSL博物館
今年(2017年)4月、鳥取県にライブスチームの新しいレイアウトができたことは、ライブスチームクラブの会報やテレビのローカルニュースで情報を得ていました。会報には、早速、4月1日の竣工記念運転会に参加された方の報告記事が掲載されています。竣工式典では、地元選出の衆参議員のほか、行政関係各位のご臨席があったのだそうです。へえ〜、ライブスチームのレイアウトなのに……。
規模の大きいレイアウトは珍しくありませんが、八頭町による行政主導の公設公営で、しかも機関車まで展示されている博物館なんて聞いたことがありません。いつか訪問したいと強い希望を持っていたところ、幸運にも、鉄ちゃんツアーのお誘いを受けたので、同行させていただきました。それなら、若桜鉄道にも。圧縮空気で駆動するC12が有名ですよね。我が家のC11といっしょです。(笑)
「やずミニSL博物館」は、さすがに大規模で立派です。施設屋内には転車台を中心にたくさんのライブスチームが展示されています。転車台は、電動の遠隔操作で旋回します。ガラス戸で仕切られた外側には、ライブスチームのスチームアップエリアが完備されています。、もちろん屋根の下。整備中に腰を曲げなくてもいいように、一段低くなった側溝のような仕掛けもあります。尋ねたところ、やはり名前をよく伺うライブスチーマーの方の細かいアドバイスに基づいているのだそうです。それなりのライブスチーム経験者でないと、わからない工夫が随所に見られます。金は出すが口は出さない。八頭町、なんと志の高い立派な自治体なんでしょう!
スチームアップエリアには、しっかりしたトラバーサーがあります。これに乗せたまま、機関車の方向転換もできます。トラーバーサーのレールの端に転車台のような円形レールがあり、そこまで移動させると、トラバーサー自体がくるっと旋回。ほお〜。【以下の4コマ画像】 機関車持ち込みで個人運転会もできるようです。いずれ機関車を持参して運転してみたいですね。もちろん1回100円で乗車もできます。運客担当ご苦労さまです。
レイアウトの外に目をやると、何やら有蓋貨車のようなものを発見。近づいて確認すると、何とワフ29000!どうして? 「若桜線SL遺産保存会」が譲り受けて保存しているのだそうです。しかも、若桜線の駅にもう1両あるとのこと。ここのワフは倉庫代わりに使用されているようですが、走り装置や床下機器は現役時代そのまま。なんと、発電機のベルトも残っています。私にとって、これは運命的な出会いですね。
当方のワフ29500は、床下機器の再現に挑戦しつつも、ブレーキシリンダー、空気配管は、まだ手つかずのまま。というのも、正確な図面が手元になく、手掛かりにした実車は走り装置と床下機器が取り外されていて、詳細な確認ができなかったからです。その点、ここのワフの保存状態はほぼ完璧です!改めてこれを仔細に観察してデータを収集すれば、当方のワフの床下を完成させることができるでしょう。ワフ製作はまだ終わったわけではありませんからね。今後の夢が膨らみます。よし!
2.若桜鉄道 八東駅
「若桜線SL遺産保存会」のもう1両の保存ワフ35000は八東駅にあります。この駅の見所は、保存されたワフもさることながら、貨物ホームと貨物駅舎があるところです。私が幼少のころ目にした可部線非電化区間の駅には、旅客用のホームとは別に、引き込み線があって貨物ホームがありました。この八東駅と同じです。田舎の駅はたいていこんな感じでした。貨物車両だけでなく、貨物ホームも合わせて、かつての姿を残そうとする踏み込みと意欲に脱帽です。
3.若桜鉄道 若桜駅
若桜鉄道の終点若桜駅。構内に、あのC12 167が留置されています。その後ろにはDD16と12系客車も。蒸気機関車に興味がないわけではありませんが、気になるのは周辺の鉄道関連もの。機関車の前には、手押しの緑色の転車台。ミニSL博物館の転車台は、これがモデルでもないのですね。この若桜駅の転車台は上路式ですが、ミニSL博物館のは下路式でした。色はよく似てますけど。開口の倉庫には、保線トロリー。車輪の輝きを見ると現役のようです。保線作業に活躍しているのでしょう。
一番気になったのは、扉の閉まった木造機関庫。中に何があるのかな。柵状の隙間からのぞき込むと、無蓋貨車が見えます。その後ろは車掌車ですね。これも公開してほしいなあ。興味津々です。線路の一番奥の突き当たりに、黄色のいわゆるモーターカーが見えます。スノープラウ付き。これらの鉄道関連ものは、営業線では、たいてい「関係者以外立入禁止」のところにあって、身近に目にすることはできません。そういう意味でも若桜鉄道は貴重な鉄道ですね。
4.津山まなびの鉄道館(おまけ)
若桜鉄道からの帰路、津山の学びの鉄道館に立ち寄り。扇型機関庫と転車台は、すでに見学済み。(→岡山県鉄道遺産訪問記)その後、京都鉄道博物館の拡張開業にともなって、大阪の交通科学博物館の余剰機関車がここに移されていると聞いていました。ほお〜。以前はガラスが割れて哀れな感じだった機関庫がきれいになっています。よく見ると、アクリル板ですね。
新たに移設された機関車の1つはD51 2です。初期型のいわゆるナメクジ。到着早々、汽笛タイム。もちろん機関車本体の汽笛ではなくて、柱に取り付けられた汽笛。蒸気ではなくて、圧縮空気。それはともかく、蒸気機関車の汽笛の音はいいですね。車体に付いていると、ボイラーなんかが共鳴して音色も変わるはずです。別棟では、大阪からの輸送記録映像が流されています。もちろん分割して大型トレーラー。陸送が難しいところは、フェリーによる海上輸送だったようです。大変だあ。
新しい機関車の2つめはDF50 18。これも交通科学博物館のお下がりですが、とてもきれいです。転車台に載っています。こちらも例によって、転車台の旋回。前回見学したときは、空のままの旋回だったので、今回はそれなりに見応えがあります。動態保存ではないので、移動はどうするのでしょうか。
機関庫の中にアントを発見。これです。遠目ながら、よく見ると「アント工業」のメーカーズプレート。あれ、蟻のように小さいから「アント」かと思っていましたが、メーカーの社名だったんですね。せっかくなので、転車台の旋回だけでなく、このアントを使った機関車の移動作業を見学したいものです。イベント期間が終わると、転車台から機関庫に移動するということでした。しかし、静態保存車両の軸受は大丈夫なのでしょうか。固着したりしないのかな。身近にほぼ静態保存のライブスチームをメンテナンスしている者として気になりますね。
機関庫の裏に回ると、DD16 304のラッセルヘッドが顔をのぞかせていました。ボギー台車なんですよね、よく見えませんけど。私は、脚光を浴びないこういう働く鉄道車両が大好きです。貨車たちもそうです。今回のやずミニSL博物館と若桜鉄道の訪問は、私の今後の活動に展望を与えてくれました。まだ、最終完成に至っていなかったワフを、床下だけでなく、室内も含めて仕上げるぞ!それから、働く貨車をもっと製作するぞ!ライブスチームの貨物列車が私の夢ですからね。定年後の意欲がわいてきます。
(後日談) 学びの鉄道館の後、南小学校のC11
80を見に行きましたが、なくなっていました。屋根付きの静態保存で状態もよく、解体の悲劇に遭うようなことはないはずなのに……。帰宅後に調べたところ、どうやら津山駅前に移設展示されるとのこと。新橋駅のC11のようなランドマークにするらしい。鉄道遺産を活用したまちづくりですね。なお、この移設は、今年(2017年)8月に完了済みですが、私はまだ現地未確認。また次回。