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定年退職からのSR400


 定年退職とともに車は卒業。キャンピングトレーラーBURSTNER350Nは退職に先立って手放した。ランドクルーザー80も実家の片付けに大活躍した後に手放した。残ったのは実家にあった軽の三菱ミニカだけ。これで日常生活の用は足りている。定年退職後に憧れのロードスターを手に入れる、という選択は理解できる。「いいね」とも思う。しかし、私はもう十分車を堪能した。したがって、車はもう卒業。

 しかし、だからといって単車も卒業するとは言っていない。実家の車庫には「初度検査登録」昭和59年4月のYAMAHA SR400が、シーツに覆われて私の定年退職をじっと待ってくれていたのだ。
これまでの単車遍歴

 下関に移る前、広島を拠点に九州から西日本各地をよくソロツーリングした。下関に移ってからは、奥さんとダンデムすることもあった。しかし、それはほんのわずかな期間。屋根付き車庫がなかった。やむなく実家の車庫に保管。そうなると、車検切れは言うまでもなく、毎年の自動車税の負担も大きく感じる。えいやあ、とナンバープレートを返納。その後は鳴かず飛ばずで、この度定年退職を迎えた次第です。単車は卒業していない。さあ、どうする?

 すぐには動かない。機械モノを長年放置すると不具合が生じる。例えば、現状フロントディスクブレーキのパッドが固着して前輪が回らない。キャブレターはどうなっているんだろう。いろんなところのメンテナンスが必要。でも、自分でするにせよ、外注するにせよ、これは何とかなる。一番の心配事はこれではない。


 ヘルメットはある。ほとんど使っていなかったSHOEIのジェットタイプ。キズもなく、内装の劣化もなさそう。一番の心配事はウェア。クシタニ KUSHITANIのレザージャケットとレザーパンツ、そしてブーツ。当面使うことはないと思って、クシタニにクリーニングを依頼して大切に保管していた。ブーツはソールを貼り替えたばかりだった。さすがにクシタニ、製品に問題はない。問題はむしろ中身。果たして30数年も前のレザーウェアをいまの私が着られるのか?

撮影 2022/10/02

 大丈夫!!ブーツは言うに及ばず、パンツもはけるし、ジャケットも着られる。体型が変わっていないということか。日頃のトレーニングのおかげだな。奥さんは私のレザー姿に惚れたらしい。(笑) 娘たちは、お父さんのこの勇姿を覚えているかな。まだまだ小さかったからね。気になっていたウェア問題はあっさりクリア!

 レザーウェアはオシャレの問題ではありません。単車には車のようなボディがないので、その代わり。最低でもブーツとグローブは必須。普通に乗っていてもちょとしたダメージを受けやすい箇所だからです。ただし、真夏のレザージャケットはダメ。灼熱地獄になります。そうそうグローブがありません。擦り切れそうになっていたので処分したんだったかな。これは新調しよう。


 クシタニのメンバーズカードも出て来ました。「2,500円お買い上げごとに1個捺印」「スタンプ数40個で記念品をプレゼント」などとある。スタンプが36個あるが、「発行より2年間有効」で、さすがにもう無効か。「61.10.-2広島」の丸スタンプも。独身貴族の頃はよかった。時代もバブル!


 ウェアの問題は簡単に解決したが、もう1つ気になっていることがあった。ナンバープレートを返納したとき、窓口で「今後再登録することはありますか」と尋ねられ、特にあてはなかったものの、「はい」と答えて受け取ったのが「自動車検査証返納証明書」。陸運支局長の公文書。再登録する際に必要なんだろうなと軽く考えていた。実際に再登録するしないは別にして、これも探して見つけておきたい。

 しかし、定年退職で戻ってきた実家の片付けは、時間も労力も大変だった。あるとすれば「SR400」のファイルの中。しかし、数多い段ボール箱からは容易に見つけられない。出てこなければ登録をあきらめるかと思い始めた片付けの終盤、ファイルを発見。中には350円の手数料領収証といっしょに「自動車検査証返納証明書」。「交付年月日」平成18年10月30日。ほお、これはきっとSR400をあきらめるなという天恵に違いない。単車は卒業していない。周辺の状況は背中を押している。さあ、どうする?

 好き者には欲しくてたまらない単気筒のYAMAHA SR400。生産中止になったとも聞く。この間、譲って欲しいという方が来られたこともあった。しかし、その方はご家族(奥さま?)の同意が得られず頓挫。定年退職後、他にやりたいことも数々あり、単車の優先順位は最上位でもないかな。娘に相談すると「人気のあるオートバイらしいよ。もうしばらく寝かせたら」。待った方が高値がつくってか!?それとも古希のお祝いに再登録か!?いずれにせよ結論は先送り。「老いては子に従え」。(2022/10/05)


再登録なるか





定年退職改め
古希からのSR400

2025/08/07 更新
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 話はトントン拍子に進んだ。トレーニングに通う途中でいつも目にするバイク王。「バイクのことならバイク王」「販売・買取」の看板。以前、自宅最寄りの個人バイク店に相談したところ、渋い反応だった。やってみないと分からない仕事は引き受けたくないですよね。その件があって逡巡していたが、バイク王の「買取」に賭けてみた。

 「初度登録昭和59年(1984年)、平成18年(2006年)に検査証を返納したSR400(1983年式 2H6)を手放したいのですが、引き取ってもらえますか」。窓口の女性スタッフさんに「自動車検査証返納証明書」と単車の写真を提示したところ、「少々お待ちください」。奥の事務所に引っ込んだ。しばらくして「値がつかず引取料をいただくこともありますが、値がついても0から8万くらいでしょう」。表情は固く、言葉も事務的。やはり難しいのかな。次の手に移る。

 「手放す前にもう一度乗りたいので、走れるようにレストアしていただけませんか。そのあとで手放したい」。スタッフさんの表情がゆるんだ。別のスタッフさん(店長らしい)も出てきて、SRのレストア実績のあるバイク店の紹介が始まった。早速「返納証明書」と写真、私の連絡先をバイク店に送る。折り返し電話が来て、引き取り日時の打合せ。1週間後に決定。トントン拍子とはこのことだ。

 定年退職後、SR400の優先順位は高くなかった。しかし5年経過して、順位の高かった庭園鉄道に竣工のめどが見えてきた。古希を迎え、漫然と先送りしない方がいいとも思う。SR復活プロジェクトに着手する頃合いかな。そう考えたものの、自分でレストアする技量も手間もない。SRに特化したお店があるはずだが、手掛かりがない。プロジェクトは立ち上げ初頭で行き詰まっていた。思わぬ展開にウキウキ!


 引き渡す前に現状を確認しておきたい。長年のホコリを払い、できるだけきれいにして私の意気込みも示したい。あちこちにサビが出ているものの、タンクとサイドカバー、クロームメッキのフェンダーは比較的きれいだ。サビが著しいのはチェーンカバー【画像下左】。エキゾーストパイプにもドット状の小さなサビ。フロントディスクブレーキのパッドが固着して前輪が回らない。油圧ブレーキのオイルもダメ【画像下右】。
サビの状態

   

 これらはあくまで外観上の問題。目に見えなところはどうなっているのか。タンク内のサビ具合はどうなんだろう。最寄りのバイク店が嫌がったのはこれが理由だった。キャブレターのニードルも固着しているかな。シールやオイルは変質しているに違いない。でも、あとはバイク屋さんにお任せしよう。約束の引き渡しは明後日だ。ワクワク!!(2025/06/29)


引き渡しの日

 2025年7月1日午前、バイク屋さんが軽トラでやってきた。開口一番、「失礼ながら、思っていたより程度がいいですね」。そうでしょ! バイク王ではまったく相手にされなかった。「コンクリートの車庫がよかったのかも。スチール製の車庫は厳しいです。数年で大変なことになったケースもあります」。そして「外観はあとにして……」。おや?

 「キックしましたか?」なるほど。オイルが落ちているので、動かすと内部にキズが着くってことですね。キックはしてないけど、ピストンは動いたかも。デコンプレバーを引いてインジケーターを確認したことがあった。「プラグ穴からスプレーを吹きます」。そんな手があったのか! 知っていればそれなりに扱ったのに……。

 私が一番気になっていたタンク内のサビ具合。「そんなでもないです。ひどいとキャップが開かなくなります」。ちょっと安心した。「まず、エンジンが動くところまで整備します。そのあとどこまできれいにしますか」。サビの出たメッキパーツの対応のようだ。「新品パーツも手に入ります。この年式のマフラーはどうだったかな……」。

 「あまり手を掛けると新車が買える額になりますよ(笑)」。とりあえずエンジンが動いた時点でお店に行こう。それまでにどうするか考えることにした。「最長3ヶ月かかったケースがあります」とも。まあ、真夏には乗らないので、時間がかかっても大丈夫。「そのとき返納証明書を持ってきてください」。やっぱり「返納証明書」が必要なんだ。

   

 引き渡しの準備作業が手際よく進んでいく。固着していたフロントブレーキは工具を使って難なく解決【画像上左】。前後のタイヤにエア補充。携帯電動空気入れという優れもの【画像上右】。へえ〜、そんなものがあるのか。楽チンだなあと感心していたら、SRは車庫の外へ。あっという間に軽トラに乗せられ、行ってしまいました。数ヶ月のお別れ。また会いに行くからね。(2025/07/05)



「おりゃあー!」


無事載った!


「しっかり固定しないとコケます」


「では、失礼します」


行っちゃった。




BIKE Dr. KEN(バイク ドクター ケン)

 引き渡しの日から2週間余りが経過。どんな感じなんだろうな。整備の進捗具合が気になる。合わせて、どんなお店なんだろう。トレーニングのあと、バイク屋さんに寄り道をしてみた。路面電車からJRに乗り継いで4つ目の駅。以前、サクラオ酒造工場の見学に訪れたことのあるところだ。駅から徒歩10数分でバイク屋さんに到着。バイク王お勧めのBIKE Dr. KEN(バイクドクターケン)。


 あれ、きょうは休業日ではないはずだけど、入口にカギが掛かっていてひと気がない。電話で確認すると、ちょうど近所までお出かけらしい。しばらくして戻って来られた。「まだ手付かずなんですよ。キャブレターのパーツを注文しました」。別の場所に保管してあるらしくSRにはお目にかかれず。

 整備スペース中心のこぢんまりした室内には、1ヶ月前に整備を始めたという分解されたバイクが1台。まだまだ時間が掛かりそうだな。急いでいるわけでもないので、気長にエンジン始動の連絡を待ちましょう。とにかく始めてみないとどうなるかわからない、ということだ。店舗の場所を確認した初訪問。(2025/07/18)





エンジン始動!

 2025年8月2日、待望の電話。「エンジン掛かりました。調子もいいです」。ヤッホーー! 翌々日に早速訪問。すでに下見をしているので難なく到着。お休みかと思った前回とは打って変わって、若いお兄さんたちが千客万来。「いつもは前回ような感じなんですけど……」。しばらく待って再会したSRがこちら。


 燃料タンクとシートが外された姿は初めてだった。今回のレストア作業はエンジン始動まで。つまり、関係するのは、@エンジン本体、A電気系統、B吸気系統だけ。それ以外は元のママの手付かず。

 @ピストンの動きに問題はなく、カムなどの異音もなし。プラグの穴からオイルを吹く方法は以前聞いた。Aメンテナンスフリーのバッテリーを新調。ただ、接続ハーネスがなかったので作ってもらった。灯火類はすべて正常。Bとりわけキャブレタの分解清掃が大変だったらしい【画像左】。

   

 キャブレタがキレイだったので、新品に交換したのかと思ったが、高周波洗浄機を使ったのだそうだ。何回か手間を掛けたとも。一番心配した燃料タンクはそのまま使えるようだ。お店の隅に保管してありました【画像右】。ビールが入っているわけではありません(笑)。「当初の予想とは違って、かなり程度がいいですね。まだ2万キロですし」。ヨシ! で、エンジンは動くの?


 インジケータを見ながらカリカリカリとキック位置を探す【画像上】。おおっ!! エンジンが掛かった。懐かしい単気筒の排気音。全然問題ない感じ。「最近の中古よりずっといいです」。これで最初の難関を越えたわけだ。ん? 燃料タンクがなくてもエンジンが掛かるの? ご心配なく。画像ではわかりにくいですが、ガソリン入りのボトルが病院の点滴のように吊り下げられています。なるほど。

 クロムメッキのサビは、専用クリームで磨くとほとんどわからなくなることも判明。実演してもらった。チェーンカバーとハンドルバーは交換するにしても、それ以外は磨けば何とかなるのじゃないかな。ちょっと安心。次のレストア作業は、車検が通るところまで。「返納証明書」と「住民票」を渡し、今回までのレストア費用を支払ってお店をあとにした。(2025/08/07)